山田雅人「かたりの世界」で新境地、マイク1本でスポーツ名場面など再現
「芸歴31年、先輩や親友のひと言や支えのおかげで『かたり』という新境地を見つけました」―。タレント、俳優の山田雅人さん(53)がマイク1本でスポーツの名場面などをリアルに再現する「かたりの世界」が話題を呼んでいる。これまでに長嶋茂雄氏、葛西紀明選手など直接本人に会って取材。公認を得て、さらにその名場面に立ち会った選手や家族などにも話しを聞いたうえで描く「ドキュメンタリーワールド」のスタイルを確立してきた。今まで取材した人数は約3000人。そこから生み出させるかたりの秘密に迫る。 「ひらパー兄さん」に“岡田准一効果”ガッツリ出た!!
かたりのきっかけは、下北沢の劇場楽屋で
かつては「ざまぁKANKAN!」などの関西のローカル番組司会などで知名度をあげ、俳優としては長年「渡る世間は鬼ばかり」に出演するなどマルチな活動を続けてきた山田さん。今の「かたり」の原点となったのは約10年前、東京は下北沢の劇場楽屋でのちょっとしたやりとりだった。元々、競馬の実況再現または架空実況が持ちネタのひとつだった山田さん。それを楽屋で披露した時、近くにいた放送作家、高田文夫さんの目にとまり「競馬は知らない人も多い。それを野球でやってみろよ」と声をかけてきてくれた。 そのひと言がきっかけで、最初に取り組んだのは自身がファンである阪神タイガースの掛布雅之選手(現打撃コーディネーター)と読売ジャイアンツのエースだった江川卓氏の名勝負を描いた「掛布vs.江川」を作り劇場などで披露。後に西鉄ライオンズ(現西武)のエースだった故・稲尾和久氏のと長嶋茂雄氏の勝負の語りも作った。稲尾氏とは長年、関西の番組で共演しており、じっくり話しを聞いたうえで作った。この作品ができたある年の正月、高田さんに年賀状で「新作ができました」と報告。すると高田さんから「下北沢の劇場をおさえたから」と電話があり、後にその劇場で披露。高田さんからは「これでOK」と言われたという。マイク1本でも映像を編集して出すようなことを「かたり」で伝え、それを受け止めるお客さん側は頭の中で想像をふくらませる。そんな「言葉のドキュメンタリーワールド」のスタイルが確立した瞬間だった。 以来、東京を中心に年3~4回のペースで語りを披露。同時に、語りたい人に直接取材を申し込み縁を広げていった。1979年、広島と近鉄の日本シリーズ「江夏の21球」のかたりをする際も、江夏豊氏をはじめ試合に出ていた山本浩二氏、衣笠祥雄氏、高橋慶彦氏といった当時の選手をはじめ、球審にも話しを聞いた上で完成させた。そうしていくうちに、取材人数は3000人にまでふくれあがり、その様子をノートにとっては文字をおこしては、かたりに反映していくスタイルを継続。また、長嶋茂雄氏の自宅を訪ね取材したこともあり、長嶋氏の国民栄誉賞を祝う会では、本人や選手らの前で「長嶋茂雄物語」を披露したこともあったという。