「人工乳房」の彩色という天職を得た、53歳イラストレーターのパワレルワーク
一人ひとりに合わせた胸を細かく追求。スタート後、難しさに直面
――新しい仕事はスムーズでしたか。 きつ:それが、全然! 大学で美術を学び、イラストレーターとしてのキャリアも20年以上ありますから、比較的簡単にコツがつかめるだろうと思っていたのですが……。 ――想像していた以上に難しかった? きつ:最初に、本社の研修に参加したとき、指導講師の彩色の仕方を見て「あ~、私、下手くそだな……」と落ち込みました。自分なりにコツがつかめたなとまで、自信が持てるまで1年ほどかかりました。 ――どんな素材に、どう彩色していくのですか? きつ:使う絵具は、特殊なもので5色。それを混ぜ合わせて肌色をつくり、シリコン製の人工乳房に色を塗っていきます。お客様ご自身に合わせた肌の色合い、血色、血管の浮き具合、ほくろなど、とことん細かく追求していきます。 ――血管やほくろまで!? きつ:基本の肌色4色から選ぶコースもありますが、せっかく作るなら、自分の肌にぴったり合う色で、かつての「私の胸」を再現してほしいというお客様もいらっしゃいます。彩色技術者は、そういう「自分専用の彩色」を希望される方のために、一人ひとりの「新しい胸」をつくりあげるのです。 続きでは、工乳房のフィッティングと彩色のサロンを自宅に開設するほど真剣にとりくむきつさんの、心境などについて聞いていきます。 取材・文/ひだいますみ
@DIME編集部