空自「ファントムII」のカラフル名物マーク 実は「二代目」!? “幻のオジロワシ”が消えたワケ
大きく色鮮やかだった「ファントムII」のオジロワシ
航空自衛隊の第302飛行隊は、最新のステルス戦闘機F-35A「ライトニングII」を運用する部隊として青森県の三沢基地に所在しています。 【別モノじゃん…】これが短命で終わった「幻」のオジロワシマークです(写真) ただ、F-35Aを装備するようになったのはここ5年ほどのこと。それ以前はF-4EJ/EJ改「ファントムII」戦闘機を長らく運用していました。しかも、この時代にはF-4の垂直尾翼に大きな尾白鷲マークを描いていたことから、「オジロワシのファントム」としてよく知られた飛行隊でもありました。 赤・青・白・黄の4色を主体に垂直尾翼いっぱいに描かれたオジロワシマークは、遠目からでも目立っていたため、いまだに人気のある飛行隊マークのひとつでもありますが、その図柄が生まれた経緯についてはあまり知られていません。 筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)はこのたび、第302飛行隊の創隊50周年記念式典を取材したのですが、そこに招かれていた飛行隊OBのなかに、なんとこのオジロワシマークをデザインした元パイロットがいたため、その経緯についてハナシを聞くことができました。 オジロワシのマークをデザインしたのは元航空自衛官だった山本忠夫氏で、第302飛行隊が発足した当時に、部隊に所属していたF-4EJ「ファントムII」のパイロットだったそうです。
水墨画風だった? 幻のデザイン
そもそも、第302飛行隊は北海道の千歳基地で1974年に新編されています。運用するF-4EJ「ファントムII」は当時最新鋭の機体であり、それを運用する部隊は300番台のナンバーが付与されたまったく新しい飛行隊が用意されることになっていました。 このような流れから第302飛行隊は、F-4EJを装備する2番目の飛行隊として生まれたのです。ただ、新編部隊ゆえに最初はシンボルとなる部隊マークがなく、それらも新しく作る必要がありました。初代隊長の意向で、マークは地元北海道に生息するオジロワシをモチーフにすることこそ決まったものの、それをどう意匠化するかは飛行隊の隊員たちの腕にかかっています。 結果、隊員からデザイン案を公募することになり、最初に選ばれたのが、筆絵風のタッチで書かれたオジロワシのデザインでした。現在のマークと比べると写実的にオジロワシをそのままイラスト化したようなデザインになっており、使われている色も水墨画のような黒一色です。一応、このマークは試験的にF-4EJの垂直尾翼にも描かれたものの、正式に採用されることはありませんでした。 こうして、いわば幻で終わった「オジロワシマーク」について、前出の山本忠夫氏は次のように回想しています。 「最初のデザインは私の先輩が作ったもので、とてもよいデザインだと思います。ただ、ファントムの垂直尾翼は非常に大きいため、そこに実際に描いてみるとインパクトがなくて不評でした。そこで新しいデザインを隊内でまた募集することになりました」 山本氏はもともと絵を描くのが趣味だったそうで、新しい部隊マークをデザインして応募。これが現在のオジロワシマークの原点となりました。