イチゴで狙う「SNS映え」 「1300円」でも行列 「予約2週間先」道の駅も
お客さん呼ぶ「古都華」 生果販売も伸び
甘味と芳醇な香りが特徴の「古都華」は、2011年に県が育成。「映え」にふさわしく大粒でつやが美しい。甘味も際立っている。21年時点で県全体の3割の16ヘクタールで栽培され、平群町が栽培面積で1位を誇る。同町の道の駅は「古都華」を26粒使った特大のパフェを客のイチゴの購買意欲につなげ、道の駅の売り上げを伸ばした。 「道の駅大和路へぐり くまがしステーション」のレストラン「hanana」は、「古都華パフェ」(2480円)を19年から販売。1月中旬から4月上旬までの1日40食限定で、2週間先の予約はすぐに埋まってしまう。 大和高田市の大学生、平巳雅稀さん(21)はパフェをスマートフォンで撮影。「やっと予約が取れた。果肉が柔らかくて甘い」と、母と親戚の女性の3人で2個をシェア。土産でも「古都華」を4パック買った。他の客も顔と比べ、大きさを強調した写真や動画を撮るなど、「映え」は上々だ。 道の駅の中山悟所長は「22年度の道の駅で、イチゴの売り上げが20年度比で2・3倍に伸びた。写真映えするパフェが奏功している」と話す。
取材後記
「若者の果実離れ」といえど、売り方を工夫すれば果実へのニーズは潜在的にある。「チョコベリー」は1カップ1300円でも完売必至だが、イチゴ1パックが同様の値段では、消費者は買いづらいだろう。しかし、カフェで飲み物やスイーツをセットで頼むと、同等の価格になってしまう。「素材にこだわったテイクアウトできるスイーツ」だと思えば、従来なかったジャンルだ。 簡便なものが受けるのと同時に、若い世代はモノだけでなく体験なども求める「コト消費」の傾向が強い。食べ物なら、その場所に行かないと買えないものを食べた。また、食べたことを友人やSNS上でつながる人と共有できたことに充実感を得ている。 こうした人に果実を選んでもらうには、品種自体の希少性だけでなく、見映えを意識した売り方も必要だ。ここに国産果実復権のヒントがあるだろう。(木村泰之)