『相棒』史上最悪の鬱回は? 衝撃のトラウマエピソード(1)被害者遺族が不憫すぎる…観ていて胸が痛くなる傑作
25年以上400作品以上が放送されているドラマ『相棒』。現代社会を切り取るという方針と視聴者の顰蹙(ひんしゅく)を恐れないという攻めた姿勢で、これまで数々の名エピソードを生み出してきた。今回はその中でも特に視聴者をノックダウンさせた鬱回を5つ紹介したい。第1回。(文・Naoki)
シーズン3「ありふれた殺人」(第11話)
放送日:2005年1月19日 脚本:輿水泰弘 犯人役:小見山(信太昌之) 【注目ポイント】 こちらの選出理由は”悲し過ぎる被害者遺族”だ。 20年前の女子高生殺人事件の犯人が警察に自首をしてくる。 犯人は小見山という男で、何者かに命を狙われているから助けてほしいと警察に保護を要求する。 小見山には贖罪や謝罪の気持ちが無く、警察も既に時効が成立しているので追い返し、報道で名前を明かさずに犯人が見つかったことを伝えるのが関の山であった。 その報道を見た被害者の坪井夫妻は「犯人の名前を教えて下さい」と静かだが強い意志で毎日警察を訪ねてくるようになる。 たらい回しにされ、特命係まで来た夫妻に対し、亀山は何も語れないことをもどかしく思い、胸を痛める。 そんな最中、小見山が何者かに殺害される。 当初、坪井夫妻や20年前に捜査をしていた警察官が容疑者に浮上したが、特命係が導き出した真犯人は騒音問題で揉めていたアパートの隣人であった。 警察上層部は、今回の事件が20年前の事件とは無関係とし、小見山が過去の事件の犯人とは公表せず、”ありふれた殺人事件”として発表するように指示を出す。 小見山が殺されたニュースを眺めながら坪井夫妻は犯人の正体を求めて警察を訪ねるのである。 本作は2005年に放送された。まだ時効制度が残っていた時代の物語である。 そもそも時効制度は、事件発生から犯人逮捕までの時間があまりにも長すぎると冤罪のリスクが高まる、という捜査する側の理屈で成り立っていた。しかし今回の小見山は完全なる逃げ得で、その犠牲になった坪井親子が哀れで仕方ない。 娘との最後の会話や自責の念で自殺未遂を起こす妻、そんな妻を支えながら自身も精神的に疲労している夫…。彼等が最後に抱き合い涙する場面や去っていく姿には涙を禁じ得ない。 また、本作のような事例は現実でも起こった。1978年に発生し、2004年に犯人の自供によって事件の全貌が明らかになった足立区女性教諭殺人事件がそれである。 2009年に凶悪犯罪の時効は撤廃されたので同じ悲劇は起こらないだろう。ちなみにシーズン9「過渡期」では、時効制度の変更による歪みを描いており、ぜひこちらも視聴してほしい。 (文・Naoki)
Naoki