SP3位の13歳、樋口に“ポスト真央”の期待
全日本フィギュアスケート選手権(長野・ビッグハット)女子シングルのショートプログラム(SP)で、全日本選手権初出場の13歳、樋口新葉(わかば=日本橋女学館中2年)が64・35点の高得点で3位につけた。 66・70点で首位に立った本郷理華(愛知みずほ大瑞穂高3年)とは2・35点差、2位の宮原知子(さとこ=関大高2年)とは0・13点差という僅差で、フリーでの逆転も可能な好位置だ。 戦前には10歳で全日本を制した稲田悦子がいたが、13歳の優勝となれば戦後では1972年大会の渡部絵美以来42年ぶりで、休養中の浅田真央、引退した安藤美姫らを超える年少優勝となる。衝撃の全日本デビューを飾った超新星の実力はどのようなものか。“ポスト真央”あるいは“2018年平昌五輪の星”になれるだろうか。
最終グループの2つ前、第3グループの6人が6分間練習のためにリンクに出た中で、ひときわ目立つ速さでビュンビュン滑っている選手がいた。樋口だ。まだ顔は知らないという人でも樋口を見つけるのは簡単だ。抜群のスピード。これが樋口の大きな特長なのだ。 演技開始。氷上のカッ飛び娘は最初の2回転アクセルをきれいに着氷すると、続く3回転ルッツ+3回転トゥーループの難しいコンビネーションジャンプを切れ味鋭くまとめ上げ、スピンへとつなげていった。 後半にはステップからの3回転フリップを難なく成功。満員のファンに手拍子で後押しされながら演技を終了すると、感情をぶつけるかのようにガッツポーズを作った。スピード感とジャンプの技術、切れ味は文句なし。3つのスピンにはすべて最高のレベル4がついた。 「最初から最後までずっと緊張していて、6分間練習でもジャンプを失敗してしまった。本番でも失敗するんじゃないかという不安があったけど、しっかりと集中したら、ジャンプは成功した。それがうれしかった」。 13歳は話しぶりも堂々としていた。 1位から8位までを13歳から18歳の選手が占めるという結果になった女子シングルSP。若手の勢いが存分に出た中で象徴的存在であるのが、今大会の最年少であり、ただ1人の21世紀生まれである樋口だ。 日本女子は今季、長年フィギュア界を牽引してきた浅田真央が休養中で、鈴木明子が引退。トップ勢が抜けたことで、GPファイナル出場を決めるGPシリーズポイントでは7位本郷、8位宮原、9位村上佳菜子の3人が補欠という厳しい状況となった。繰り上げで本郷が出場したことで「日本女子ゼロ」は回避できたが、“真央不在”の影響はやはり厳しいものだった。 そんな中、勢いよく飛び出したのが13歳の樋口だ。ジュニアGP参戦1年目だった今季は9月のチェコ大会で2位、10月のドイツ大会で優勝して注目を集めると、11月の全日本ジュニア選手権を浅田や安藤らと並ぶ中2で制し、成長スピードの速さでも周囲を驚かせた。 今月中旬にスペインで行われたジュニアGPファイナルでは3位。ジュニアGPファイナル男子シングルで優勝した宇野昌磨(中京大中京高2年)、2位になった山本草太(邦和スポーツランド、名古屋市立東港中3年)とともに、次代を担う期待の星として脚光を浴びながらの全日本選手権デビューである。