SP3位の13歳、樋口に“ポスト真央”の期待
まだフリーを残しているが、シニアと初めて一緒に戦ったとは思えないほどの好成績をSPで残したことからもわかるように、ジャンプの種類、質、演技構成ともに申し分ない実力を持っており、“ポスト真央”の期待は決して過分ではない。 指導する岡島功治コーチは「全日本での僕の目標はフリーで最終グループに入ること。新葉は10番以内と言っている」と話したが、前者はすでにクリア。後者も楽々と突破できそうだ。樋口は「気持ちをコントロールして、自分の持っている力を十分に発揮することを心掛けている。それが集中力につながっているし、集中していれば緊張していても失敗せずに跳べることがわかった」と胸を張る。 タイプとしてはエレガントなドール系というよりは、スポーティーなアスリート系と言えるだろう。しかし、いずれにせよまだ13歳。「全日本では村上佳菜子選手の表現力を学びたい」とどん欲な姿勢もあり、今後めきめきと表現力をつけていきそうな予感がある。 難しいジャンプの習得にも余念がない。現在、トリプルアクセルと4回転トゥーループ、4回転サルコウを練習中。まだ成功したことはないというが、「その中ではトリプルアクセルが一番成功に近い」(樋口)という。トリプルアクセルをプログラムに入れられるようになれば、伊藤みどりさんと浅田真央の系譜を引き継ぐ選手へと成長していくことも期待できる。また、好きな選手を聞かれて、「安藤美姫さんとキム・ヨナさん」と答えたことから考えれば、力強いジャンプと女性らしい表現力を兼ね備えた選手が理想のイメージとしてあるのかもしれない。 フリーでは最終グループの2番目に滑走することになった。上位3人の点差はわずかであり、実質3人の誰かが初優勝の栄冠を手にするであろう激戦の女子シングル。樋口の場合、ジュニアより30秒長い4分間という演技時間は多少の不安材料になりうるが、「演技の後半もスピードが落ちないように練習してきた」と話しているように、スタミナ対策に余念はない。 仮に全日本で優勝しても来年3月の世界選手権には年齢制限で出ることができないが、2018年の平昌五輪に関しては2017年6月30日の時点で15歳以上というルールをクリアしており、出場に問題はない。 ロシアにも樋口と年齢の近い強豪選手が数多くいる現実を踏まえると、平昌でいきなり世界一という過剰な期待をかけるのは酷だが、メダル争いに絡んでくる可能性を否定すべき要素は見当たらない。 まずは初出場の全日本選手権でのフリー。SP2位というプレッシャーのかかる状況での演技に注目したい。 (文責・矢内由美子/スポーツライター)