学費も魅力!公立の国際バカロレア認定校、さいたま市立大宮国際中の実際 来春には完全中高一貫制となり初の卒業生も
「大学受験対策は」「もっと部活動を」価値観の違い乗り越え
埼玉県には現在、4つの公立の中高一貫校がある。その中でも唯一の中等教育学校であり、国際色豊かなプログラムで注目を集めているのが、さいたま市立大宮国際中等教育学校だ。同校の英語名から、略称は「MOIS(Municipal Omiya International Secondary School)」。2022年までに国際バカロレア(IB)の認定を受け、英語教育はもちろん、探究的な学習にも力を入れている。2024年には設立6年目を迎え、来春はいよいよ初めての卒業生が巣立つことになる。 【写真を見る】3年次にはニュージーランドへの語学研修が、5年次にはさまざまな国の大学での海外フィールドワークが行われる。 JR大宮駅からバスで15分ほど。さいたま市立大宮国際中等教育学校は、市の北西部に位置する公立の完全中高一貫校だ。旧市立大宮西高校を再編しながら6年制とし、2019年度に開校した。初年度は開校バブルともいえる倍率の高騰があったが、同校副校長の難波孝史氏は、「現在の受験者動向は、落ち着きつつ横ばいです」と説明する。 「1期は160人の定員に対して1000人近い出願がありましたが、近年では4倍程度で推移しています。おそらく塾の情報収集力の賜物だと思いますが、最近は本校をしっかり研究し、よく準備して受験する子が増えたなという印象を受けています」 開校直後、公立としては特徴的な教育が浸透するまでは、保護者から困惑の声も寄せられたと同氏は語る。例えば同校では、授業をつぶして模試を受けさせたり、大学受験向けの補講を行ったりはしない。これに対しては「もっと大学受験向けのカリキュラムにすべきだ」という声もあった。また、長時間の活動を行わない同校の「クラブアクティビティ」について、「もっと本格的な部活動をやらせてほしい」という要望もあった。つまり保護者の中には、自分の中高時代の価値観をそのまま持っている人が、ある程度いたということだ。 「われわれの教育方針を丁寧に説明することで、保護者からの反対意見は激減しました。むしろ『IBについてもっと知りたい』と言ってくれる方も増えて、こちらとしても嬉しい限りです。ただし華々しいプログラムや有名大学への進学を重視するのではなく、『ここでなら自分の可能性が伸ばせる』と思う子どもに来てほしいと考えています」 開校から6年を迎えて、広報活動も軌道に乗ってきた。当初は試行錯誤の中、必死で全国の視察に回っていたが、最近は視察を受ける側になる機会も増えている。学校説明会だけでなく授業体験会も好評で、受験生からは「先輩たちが楽しそうだったから、この学校に入りたいと思った」という声が多く聞かれるようになったと言う。 「保護者とも当初のようなミスマッチはなくなり、受験者には本校の教育に向いている家庭・子どもの割合が増えています。いわばどの子が受かってもおかしくないような状況になってきているので、実質倍率は上がっているといえるかもしれません」