「“検挙されないため”という間違った目的の方もいる」 シートベルトは絶対安全ではない? 着用の子ども死亡…改めて確認したい“正しい着け方”
■着用有無で大きく変わる致死率 使用による損傷「シートベルト症候群」に要注意
警察庁とJAFの合同調査(2023年)によると、シートベルトの着用率は、一般道で運転席99.2%、助手席97.1%、後部座席43.7%。高速道路が運転席99.6%、助手席98.6%、後部座席78.7%だった。
なないろ在宅診療所の丸山潤院長は、シートベルトが原因の交通事故を診察した経験から、次のような事例を紹介する。「30代男性が高速道路を100キロ程度で走行中、あおられて焦ってハンドルを切り、ガードレールに衝突した。本人は歩けて『お腹痛いだけだから帰りたい』と言っていたが、精密検査で、腸の血管に穴が空き、大動脈にもヒビが入っていると判明した。手術を受けて1カ月で退院できたが、もし希望通り帰宅させていたら、その日の夜には出血性ショックで亡くなっていただろう」。 シートベルトの有無によって、致死率には違いが生じる。警察庁の2016年~2020年のデータによると、着用時の致死率が高速道路で0.21%、一般道で0.20%だったのに対し、非着用時はそれぞれ4.18%(約20倍)と0.63%(約3.2倍)に増加する。
丸山氏は「時速100キロも出ていれば、シートベルトを着けていないと車外に放出されて即死だ。入院1カ月で歩いて帰れるということは、やはり着けた意味はある」。一方で、シートベルトによってケガをする「シートベルト症候群」のリスクもある。「腹部から背骨までシートベルトに押される。シートベルト痕や腸管損傷、腰椎骨折が代表的だが、体で一番太い大動脈が傷つくケースもある。それを見逃すと死亡率も高い。シートベルトを着けていないのは論外だが、着けていても見逃すと死に至る病も隠れている」。 また、骨と内臓であれば、前者の損傷で済むほうがいいそうだ。「骨盤は折れても治しやすい。内臓は開腹して、血の海になっているところから小さい穴を探すので、出血で亡くなってしまうこともある。骨と内臓の損傷で致死率も異なる」とする。 さらに、首回りへの負荷も考えられる。「正しく着用していれば、鎖骨や肋骨骨折になる。衝撃が強いと体内で肺挫傷が起き、人工呼吸器が必要になる場合はある。しかし、着け方が悪いと首が“くの字”に骨折し、脊髄損傷で下半身不随になることもある」と注意を促した。