「大多数の精神科医は投薬の専門家に過ぎず、精神療法は独学」...和田秀樹氏も驚愕した「日本の心療内科」の「ヤバすぎる実態」
---------- 2020年の国内の精神科患者は、入院と通院を合わせて614.8万人。日本人の20人に1人が精神科で治療を受けている計算だ。 【マンガ】「扉の向こうに誰かいる...」1日で新居を決めてしまった女子大生の壮絶 一般的な精神疾患である「うつ病」に加え、近年は「発達障害」と診断される人も急増している。このような異常事態に警鐘を鳴らしているのが、『精神医療ビジネスの闇』(北新宿出版)の著者であり、20年以上にわたり精神医療現場での人権侵害問題に取り組む米田倫康氏だ。 米田氏は「患者が増えていることに伴い、診療の質が低い精神科クリニックも急増している」と指摘する。 一方の精神科医・和田秀樹氏は「発達障害者を異端扱いし、社会から除け者にしている現状では、過剰診断は危険だ」と語る。 日本の精神医療の問題点をめぐり、米田氏と和田氏との対談を全3回にわたり、お届けする。 ----------
精神科クリニックに流れ込む悪徳精神科医
和田 米田さんの本を読んでまず驚いたのは、精神科の悪徳病院がいまだにこんなに存在することですよ。 私が東大医学部を卒業したのが1985年で、研修医として入ったのは新左翼ばかりでいわくつきの、「赤レンガ病棟」(東大病院精神神経科病棟)というところ。その頃、一般的な精神科医は「収容所の番人」でしたが、左翼の人たちは理想主義で、「精神科の患者は社会の抑圧の犠牲者。解放されねばならない」と考えていました。そのために悪徳精神病院を糾弾するなど、まともに変えていこうという運動をやっていたんです。 米田 ちょうど宇都宮病院事件があった頃ですよね。栃木県宇都宮市の精神科病院で、患者への虐待が日常化していて、入院患者2名が看護職員らに金属パイプで乱打されて亡くなりました。 和田 あれが明るみに出たのは、1984年3月で、私はまだ学生の身として糾弾に関わっていました。宇都宮病院の入院患者の平均年齢はそう高くないのに、事件発覚前の3年間で222人も亡くなっていたんですから、異常ですよ。ただ、そういう悪徳病院の大きなトレンドとしては、社会的非難を浴びやすい精神科をやめて、老人向けにシフトする動きが起こりました。だからいま残っている精神科病院は、さすがにもうまともになっているだろうと思い込んでいた。 米田 たしかに、宇都宮病院事件後も悪徳精神科病院の摘発が相次ぎ、精神病床も減少へと転じました。ですが、患者の人権などなんとも思っていないような精神科病院はまだ健在です。最近では、東京都八王子市の滝山病院において、2023年2月以降、看護師ら5人が入院患者への暴行容疑で逮捕・書類送検されました。 そしてそれ以上に私が指摘したいのは、精神科・心療内科を標榜するクリニック(病床数が0あるいは19床以下)の急増です。1984年は精神科を標榜するクリニックが1425ですが、2020年は精神科標榜が7223、心療内科標榜が5063です(図参照、米田氏の著書より転載)。 同じ施設で精神科・心療内科を両方標榜するケースもありますが、それにしても多い。こうしたクリニックは、医師の資格さえあれば大きな設備投資を必要とせずに開業できますし、誰も診療の質をチェックしません。だから、悪徳精神科病院を経営するような層が、そのままここへ流れ込んでいます。 1950~60年代に起きた精神科病院乱立ブームと同様、畑違いの診療科の医師が突然参入して開業するケースも目立ちます。