「末恐ろしい36歳だなと」清水エスパルスを救った乾貴士の一瞬の“判断”。高速ドリブル中に考えていたこととは?【コラム】
J1昇格は「それをクリアしてこそ」
「確かにしんどいですけど、いまはまだ1週おきの試合なので。来週はイレギュラーでありますけど、1週おきならばどうにか、まだいまはいけるかな、という感じですね」 乾が言及したイレギュラーとは、中止となったアウェイの徳島戦がミッドウィークの18日に組み込まれた9月の第3週をさしている。レノファ山口、徳島、藤枝MYFCと9日間で3試合を戦った後の28日には、ホーム扱いの国立競技場に首位・横浜FCを迎える今シーズンの天王山が待っている。 「もちろん勝ち点3を取りにいくのが当たり前だし、同点に追いついて喜んでいる暇がないので、すぐに試合を再開させたかった。その意味でも、2点目が取れなかったのが残念です」 ブラガの同点ゴールが決まった直後。試合再開を急がせるしぐさを見せた乾はその意図を説明しながら、今シーズンの唯一無二の目標としてすえてきた、J1昇格への決意をあらためて掲げている。 「いや、もう勝つだけですね。ひとつでも多く勝っていきたいですし、とにかく難しい試合が多いので。でも、それらをクリアしていってこそ、J1への昇格が待っていると思うので」 1年でのJ1復帰を掲げた昨シーズンは、勝ち点1ポイント差で4位となって自動昇格を逃した。さらに決勝に進出したJ1プレーオフでは、試合終了間際にまさかのPKを献上。1-1で引き分け、レギュラーシーズンで3位と上位につけていた東京ヴェルディに、土壇場でJ1昇格の残り1枠をもっていかれた。 ヴェルディ戦後の取材エリア。乾は自分自身を含めて、厳しい矢印をあえて向けている。 「ここで勝てば、という試合がシーズンを通して何回もあった。一人ひとりのクオリティーはJ1のチームでもおかしくないけど、結局はJ2で4位。プレーオフでも勝てない、J2のチームだということ」 真剣勝負の世界は何が起こるかわからない。だからこそ貪欲に、何がなんでも勝ち点3を目指していく。悔しさだけが残った昨シーズンの結果を介して、チーム全員が何を学んだのかが問われる残り9試合。百戦錬磨の乾が見せる頼れる背中が、J1への帰還を至上命題に掲げる清水の羅針盤になる。 (取材・文:藤江直人)
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