訪問介護220カ所廃止や休止に、現実になってきた〝ヘルパーが来ない未来〟 「あんなにバッサリやめるとは…」社協が相次ぎ撤退
事業を続ける社協も苦しい。福島県田村市社協は2019年に三つの事業所を一つに統廃合。より高い介護報酬が得られるようサービスの見直しや加算金の取得を進めた結果、黒字転換に成功した。 全国社協の機関誌で好事例として取り上げられたほどだが、その後状況が一変。高齢になったヘルパーがここ1年余りで次々と辞め、収入減で再び赤字に。担当者は「新しいヘルパーを募集しても、誰も来ない」とため息をつく。 ▽低賃金、国に訴訟を起こしたヘルパーも ヘルパーのなり手確保に苦労しているのは社協だけではない。全国的に見てもヘルパーの約4人に1人は65歳以上。厚生労働省によると、2022年度時点の有効求人倍率は15・53倍で、深刻な人手不足にある。 2019年にはヘルパー3人が「移動や待機の時間を考慮しない低賃金が人手不足の原因で、政府に責任がある」として、国に賠償を求めて提訴。東京高裁で係争中だ。 厚労省は「移動などの時間も介護報酬に含まれている」との見解だが、見直しを求める声は自治体からも上がる。熊本県山都町など8自治体は中山間地での移動時間を適正に取り扱うよう、介護報酬の引き上げを厚労省に要望している。
来年度は介護報酬の改定年に当たる。厚労省は「必要な方策を検討する」として、訪問介護と通所介護(デイサービス)の両方を提供する複合型サービスを新たに設ける方向で検討している。ただ、これは主に都市部を念頭にした案。財源の制約が厳しい中、どこまで実効性のある対策を打ち出せるかは不透明だ。 ▽一定エリアへの集住が必要になるかも 介護保険に詳しい東洋大の高野龍昭教授は「そもそも、訪問介護の報酬が低すぎるのが問題だ」とした上で、こう話す。 「社協は公益的な役割を担っている存在なので、『赤字だから』『利用者が減っているから』といった理由で事業をやめるのは好ましくない。希望者がいるのなら、サービス提供を続ける責務がある」 だが、過疎地域では一軒一軒の移動時間が長く、採算が厳しいため「そうした事業所には行政が補助金などを出すといった対応も考えるべきだ」と言う。「地域の介護・医療を持続させるためには今後、高齢者に一定エリアへの集住を促すような施策の検討も必要となるだろう」とも指摘した。 ▽取材後記
政府は20年ほど前から「地域包括ケアシステム」と銘打って、重い要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けられるようにすることを目指してきた。訪問介護は本来、その要となるサービスのはずだが、ヘルパーは低い賃金に抑えられてきた。「地域包括ケア」を掲げながら、矛盾しているのではないだろうか。 根底には男性目線の「しょせん家政婦と同じで、誰でもできる」という軽視がある。だが、「生活を支える」という点では医療よりも重要な役割を果たしている。ヘルパーの在宅ケアを再評価し、専門性も高めていく取り組みが必要だと思う。