訪問介護220カ所廃止や休止に、現実になってきた〝ヘルパーが来ない未来〟 「あんなにバッサリやめるとは…」社協が相次ぎ撤退
社協が訪問介護をやめた地域では何が起きているのか。仙台から電車で約20分、人口約6万人の宮城県多賀城市を訪ねた。 須田富士子さん(66)は2014年に仕事中のけがで重い障害を負い、市社協が介護保険と共に実施していた障害福祉サービスで居宅介護を受けていた。 「まさか、あんなにばっさりサービスを切るとは…。本当に立ち往生しました」と振り返る。 市社協から「事業の廃止が決まった」と聞かされたのは19年9月のこと。「サービス提供は12月でやめ、20年3月末に廃止する」と、他の民間事業所や近隣の社協への切り替えを打診された。 須田さんは「一方的であまりに唐突だ」と、約900人の署名を集め、事業の継続を求める請願を市議会に提出。採択されたものの、最終的に市社協は20年3月末に事業をやめた。 廃止の理由は、訪問介護が年間1千万円以上の赤字だったからだ。市社協の菅野昌彦事務局長は「廃止が唐突だったとは思っていない」と話す。「ほかにも民間の事業所があり、約30人いた利用者は引き継いだ。社協にセーフティーネットの役割があるのはその通りだが、であれば、行政が補助金を出すなどして支えるべきだ」と語った。
ただ、須田さんは条件の合う引き受け手が見つからず、一時期は「介護難民」の状態に。「入浴はシャワーで体を洗い流すことしかできなかった」。今も納得できない気持ちが残っている。 社協でヘルパーとして23年働いた鈴木充子さんはこう話した。「訪問介護が受けられなくなって、施設に入った人もいる。家で暮らしていれば、近所の人とあいさつしたり、私たちのように地元の人が自転車で訪問したりする。そういう暮らしや人間関係が失われた」 ▽「ヘルパーを募集しても、誰も来ない」 公的な性格を持つ社協が事業をやめると、採算面などで民間が受けたがらない利用者にサービスが行き届かなくなる恐れがある。民間事業者が町から撤退してしまい、「高齢者が路頭に迷ってしまう」と新たに訪問介護を始めたケースもある。北海道・新千歳空港近くにある安平町(あびらちょう)の社協だ。 担当者は「撤退した事業者のサービスを引き継ぐ形で2年前に始めた。経営は厳しいが、ニーズはまだけっこうある」と話す。