制球難で勝てない阪神・藤浪に重なるスティーブ・ブラス病
6月3日、カージナルスのトミー・ファムが、いつものように一塁で大きなリードを取った。完全に投げてこない、いや、投げられない、となめてかかったのだ。しかし、その距離が6メートルに達しようかというタイミングで、レスターが牽制すると、タッチアウト。彼が長いトンネルを抜けた瞬間だった。 理由について本人は語っていないが、先程紹介したスポーツ・イラストレイテッド誌は、遅かれ早かれ、彼は克服するとみており、主に2点、理由を挙げていた。 まずは、彼が問題を認めたこと。昨年12月、大リーグは新労使協定が締結されると、レスターはこう自虐的にツィートした。 「一塁に投げることが禁止されればよかったのに」 さらにファンから、牽制専門の投手が必要ではないかなどと提案されると、それに同意し、積極的に弱点を晒すようになった。 また、同誌は、ジョー・マドン監督の対応も評価していた。 先ほども触れたが、カブスも当初は修正を試みた。しかしマドン監督は、「ホームに投げることに集中してくれればいい」と、不問にしている。そこに気を取られて、本来の投球にまで影響が出たら、本末転倒というわけだ。その言葉が嘘ではないことは、こんな起用にも示されていた。 くだんのワールドシリーズ。第7戦の5回、2死一塁の場面で、マドン監督はレスターを投入したのである。 信頼感もまた、レスターの支えになったか。 いずれにしてもこれまで、スティーブ・ブラス病を克服できた人もいれば、できなかった人もいる。症状の程度もきっかけも、人それぞれ。少なくとも、こうすれば治る、という特効薬はない。 果たして藤浪の中に潜む病巣とはなにか。それを追い出すすべはあるのか。やや大げさに言えば、彼は今、キャリアの岐路に立っているといえるかもしれない。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)