制球難で勝てない阪神・藤浪に重なるスティーブ・ブラス病
1999年にデビューしたリック・アンキール(当時カージナルス)という投手も明らかなスティーブ・ブラス病だった。 リーグでも屈指のプロスペクトとみられていた彼は、2000年から先発ローテーションに入ると11勝7敗、防御率3.50で新人賞の投票で2位となるなど、期待に違わぬ活躍を見せている。 ところが、その年のプレイオフでおかしくなった。アンキールはブレーブスとのナ・リーグ地区シリーズ第1戦に先発すると、2回までは良かったが、6点をリードして迎えた3回、投手のグレッグ・マダックスを歩かせてから崩れ、この回だけで4つの四球と5つのワイルドピッチを記録した。 彼は、続くメッツとのナ・リーグ優勝決定戦でもチャンスを与えられ、第2戦に先発したものの、初回に20球を投げたところで降板。そのうちの5球がバックネットに当たった。 翌年になると症状がさらにひどくなり、6試合に先発した段階で、24回で25四球と荒れた。降格となった3Aメンフィスでも、3試合に先発し4回1/3イニングを投げて、17四球、12ワイルドピッチと散々。事実上、彼の投手生命はそこで終わっている。 キャッチャーには投げられても、牽制が出来なくなったのが、カブスのジョン・レスターだ。 昨年のワールドシリーズ第1戦。一塁走者のインディアンズのフランシスコ・リンドーアが大きくリードを取ったが、レスターは一塁へ投げる振りしかできなかった。 「スポーティングチャートデータ」によると、レスターは2010年、牽制を98回しているが、11年は70回、12年は5回、13年は7回、14年はゼロとなり、15年4月13日に牽制するまで、66試合連続で牽制をしなかった。およそ2年ぶりの牽制は大暴投だった。 かつてレスターが所属していたレッドソックスは、2011年の終盤にはそのことに気づいた。レスターは2014年7月にアスレチックスへトレードされたが、アスレチックスもそれを承知していたという。いや、全球団が気づいていたのだ。 レスターは、例えば、バント処理をした後の一塁送球にも難があり、レッドソックスやアスレチックス、そしてカブスももちろん、矯正に乗り出した。 今年5月17日付の「スポーツ・イラストレイテッド」誌によると、レッドソックスは一塁へけん制する際も、ホームへ投げるのと同様、左足から右足にしっかり体重移動をするように指導し、また、捕手のミットを狙うのと同じように、一塁手の“腰のあたり”ではなく、一塁手のユニホームのボタンを狙え、と指示したそうである。 ところが何一つ効果がなく、14年のオフに契約したカブスは、15年のシーズンが始まる頃にはもう、修正をあきらめたという。 今年、そんなレスターにもついに転機が訪れる。