【江別大学生集団暴行死】殴る蹴るの暴行は数百発も…過激な暴力で命を奪った若者6人 専門家「希薄な関係性がもたらした不安感」が背景に
北海道放送(株)
今年10月、北海道江別市で起きた大学生集団暴行死事件。被害者の男子大学生に加えられた、殴る蹴るという暴行は、数百発にも及んだといいます。なぜ、そこまで犯行はエスカレートしていったのでしょうか。 【写真を見る】殴る蹴るの暴行は数百発も…過激な暴力で命を奪った若者6人 ◆《交際相手の女ら6人による凶行》 ・荒木颯太記者 「現場となった公園には雪が積もり、2か月前、事件があったと窺わせるような痕跡は見当たりません」 10月、北海道江別市の公園で変わり果てた姿で見つかった、千歳市の大学生、長谷知哉(はせ・ともや)21歳さん。 長谷さんに暴行を加えて死亡させたとして逮捕されたのは、長谷さんの交際相手だった女と、その友人の少年ら男女合わせて6人でした。 集団で暴行を加えた上、キャッシュカードやクレジットカードを奪う、強盗行為にまで及んでいました。 全員が、強盗致死容疑で逮捕されるに至るまで、なぜ犯行はエスカレートしたのか。 6人の複雑な人間関係や過激な犯行に及んだ背景に迫りました。 ◆《男子大学生に加えられた激しい暴行》 ・金子将也記者 「男子大学生は、住宅街から続く公園の階段を降りた、街路灯の近くで見つかったということです」 江別市文京台の閑静な住宅街にある緑豊かな公園。10月26日午前6時半ごろ、長谷さんは衣服を身に着けずに倒れた状態で見つかりました。 ・第1発見者の男性 「仰向けで大の字で、腕は曲がって足は開いていた」 千歳市内の大学に通い、真面目な性格だったという長谷さん。 ・被害者の長谷さんを知る人 「めっちゃ騒ぐような人ではないと思う。ある程度、おとしく真面目な子」 突然の出来事に、大きな衝撃が広がりました。 ・長谷さんの父親のコメント 「私どもにとっては、あまりにも突然のことで、大変心を痛めていますとともに、現実を受け入れることができません」 ◆《カード類や衣服を奪い、公園に全裸のまま放置》 ・成田颯記者 「川村葉音容疑者を乗せた車が、道警本部より出てきました」 事件に関与したとして逮捕されたのは、長谷さんの交際相手の八木原亜麻(やぎはら・あま)被告(20)と、友人の川村葉音(かわむら・はおと)被告(20)、アルバイト従業員の17歳の少年ら、男女6人です。 6人は、長谷さんの全身に複数のあざができるほど、激しく暴行を加えた上、クレジットカードやキャッシュカード、衣服などを奪いました。 八木原被告と川村被告は、クレジットカードを使って、現場近くのコンビニでたばこや弁当を購入。さらに犯行はそれだけに留まりませんでした。 ・金子将也記者 「コンビニの防犯カメラには、川村容疑者と男らがATM(現金自動預け払い機)で現金を下ろす様子が映っていました」 長谷さんを全裸で公園に放置した上で、キャッシュカードで現金を引き出したり、その金でラーメンを食べたりしていました。 ◆《犯行のきっかけは“別れ話”》 今年に入って交際を始めた八木原被告と長谷さん。犯行のきっかけは、別れ話だったといいます。 ・八木原被告(20) 「彼氏に1年後別れたいって言われたら、あなただったらどうする?」 捜査関係者によると、来年、就職活動が本格的に始まる長谷さんが、八木原被告に対し、交際関係に期限を示すような別れ話をしたということです。 八木原被告と川村被告の地元・釧路市の友人は、2人の印象をこう語ります。 ・八木原被告と川村被告の友人 「(八木原)亜麻に関しては、カレと交際していて、ちょっとけんかになって、電話したときに、すごい怒ってるな…みたいな」 「(川村被告については)友だちに何かあったら許せないからっていう、友だちのためなら、すごい手を出しちゃうっていうか…やるなら、やれるだけやっちゃうって(川村)葉音は、そういうタイプ」 捜査関係者によると、川村被告は「長谷さんに八木原被告に対して、かねてから謝ってもらおうと思っていた」という趣旨の供述をしているということです。 別れ話のもつれから犯行に及んだとみられる、八木原被告と川村被告。 一方で、ともに長谷さんに暴行し、金品を奪ったとされる少年ら4人は、1人を除いて、長谷さんと面識がなかったとみられています。 ◆《犯行に加わった少年ら4人と八木原被告、川村被告の関係性》 なぜ、彼らは犯行に加わったのでしょうか。 ・荒木颯太記者 「犯行に加わった少年ら4人は、札幌白石区内で知り合った、不良仲間だったということです」 少年ら4人と、八木原被告、川村被告との関係性です。 関係者によると、アルバイト従業員の少年(17)と、川村被告(20)は交際関係にありました。 この少年は、川村被告を通じて、長谷さんとも面識があったと見られています。 そして、アルバイト従業員の少年(17)と、18歳の男子高校生は同じ高校に通っていました。 男子高校生(18)の中学時代を知る人は、私たちの取材にこう証言しています。 ・中学の同級生 「仲の良い女の子にLINEとかで、結構攻めたことを言ったりとかしてました。LINEで女の子に対するセクハラ発言とかして、その女の子からも相談を受けたことがありました」 また、男子高校生(18)と中学の同級生だったのが、もう一人のアルバイト従業員の18歳の男です。 この男(18)と、男子高校生は長谷さんと直接の面識はありませんでしたが、激しい暴行を加えていました。 男の中学時代を知る人たちは、当時から暴力的な面があったと話します。 ・アルバイト従業員の男(18)を知る女性 「問題児ですね。結構(先生に)反抗とかしちゃって、暴力が多かった。けんかした相手を全裸にすることが趣味だった…ぽくて」 ・アルバイト従業員の男(18)を知る男性 「高校に入ってからつるむ人が、派手になって来ているということもあって、段々派手な方向に行っちゃってましたね。中学時代は、クラスであまり目立ってない人には、悪口を言ったり、暴力を振るっていたりしました」 さらにもう一人のアルバイト従業員の少年(16)は、長谷さんに激しい暴行を加えた18歳のアルバイト従業員の男と、同じアルバイト先で働いていました。 ・少年(16)を知る中学の同級生 「(中学)2年生に上がったあたりから、やんちゃな子と絡むようになって、段々そっち側に行っちゃったのかなって感じです」 「学校に来なくなったりだとか、インスタのストーリーとかで、いつもやんちゃな人とかと、町に出掛けたりしているのは、わかったので…」 ◆《6人を緩くつないでいた関係性の希薄さ》 被害者との面識がほとんどない中で、なぜ、ここまで犯行がエスカレートしたのでしょうか。 犯罪社会学の専門家は、今回逮捕された6人の関係を“知り合いの知り合い”が、緩くつながった『歪な関係』と評価します。 ・摂南大学現代社会学部 竹中祐二 准教授 「関係性が希薄、あるいは弱いからこそ『自分が離れたら何かされるのではないか』という不安感であったり…」 起訴状や捜査関係者などによると、事件当日、少年らによる長谷さんへの暴行は数時間にわたり、殴る蹴るの行為は、数百発にも及んだといいます。 直接暴行を加えたのは、川村被告と少年ら4人。 八木原被告は、警察に対し『暴行には加わらず、笑うなどしてあおった』と話しているということです。 6人は暴行の様子や長谷さんに、謝罪させる動画をスマートフォンで撮影。 長谷さんの頭や腹を踏みつけ「全部出せ、全額」などと言って、キャッシュカードを奪い、さらに顔や腹を殴って、暗証番号を聞き出したりしていました。 専門家は、犯行がエスカレートした理由について、学校や職場など、ほかに居場所がない少年たちがつながりを失うことへの恐れから、互いの行為を抑制できなかったのではないかと指摘します。 ・摂南大学現代社会学部 竹中祐二 准教授 「“他との関係がそこしかない”という、ある種の強迫観念が『同調』というものに、繋がったのではないか」 ◆《少年ら4人も厳しい罪に問われる可能性》 強盗致死などの容疑で逮捕・送検された6人。 札幌地検は、20歳を超えている八木原被告と川村被告の2人を強盗致死などの罪で起訴しました。 一方で16歳から18歳の少年ら4人については、身柄が家庭裁判所に送られ、処分を決めるために、心理状態などを調べる『観護措置』が行われています。 福岡家裁の小倉支部で、少年審判を担当していた元裁判官の内田健太弁護士は、今回は4人とも検察官送致=逆送となる可能性が高いと指摘します。 ・内田健太弁護士(元裁判官) 「事案の内容や性質、重大性からみて、この事件を“少年事件”として処理するのでは、やはり国民感情として納得できない。こういう事件については“刑事事件“”で処分するしかないと認められる。今回人が亡くなっているという重大な結果、さらに強盗の疑いがあるということですと、逆送の可能性は全員がある」 少年ら4人の観護措置の期限は、来年1月6日と7日です。 犯行がエスカレートしていく過程に、どのようなやりとりがあったのか。少年らが法廷で語る日は訪れるのでしょうか。
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