「円借款」や「無償援助」は終了 対中国ODAの現状は?
来年度予算案で、17年ぶりに政府開発援助(ODA)が増額されることがニュースになりました。中国の途上国に対する大規模な援助外交を意識したものとも報じられています。その中国に対する日本のODAは、少ないながらも続いており、批判的に語られることもあります。対中ODAは現状どうなっていて、どんなことに使われているのか。元外交官の美根慶樹氏が、経緯や歴史を振り返りながら解説します。 【図】外交力強化を狙う「ODA」今どうなっているの?
1979年から始まった対中ODA
中国に対するODAが1979年に開始されたのは、直接的には中国が文化大革命の混乱期を脱し、改革開放政策に転じたことが契機でしたが、そもそも日本として中国に援助を供与することになったのは、中国が日本と歴史的関係が深く、また、アジアの平和と安定を維持するのに中国の発展が不可欠だと考えられたからでした。 さらに、先の日中戦争で中国に多大の損害を与えてしまったことに対する償いの気持ちを持っていた国民も多かったでしょう。 しかし、それから30年以上が経過する間に中国は長足の発展を実現し、今や世界第2の経済大国になり、被援助国ではなくなり、逆に多くの国に対して援助を供与するようになっています。 日本から中国に対するODAは以下に述べる援助の種類によって多少事情が異なりますが、最も多い時にはインドネシアと一二を争う額に達していましたが、その後は中国の経済発展に伴い減少しました。現在もなお一定程度継続されているので疑問の声が上がることがありますが、中国へのODAはひところに比べれば非常に少なくなっており、終了の方向にあります。
3つの形態があるODA
そもそもODAとは何でしょうか。「資金や技術を開発途上の国に対して公的資金を用いて供与すること」というのが政府による説明ですが、貿易と比べるとODAの特色がわかりやすいでしょう。貿易は売り手と買い手の間で商業として、つまり価格が合意されれば成立するのに対し、ODAは開発途上国にとって、無償での資金援助や低い金利などのように商業ベースより有利な条件で供与が行われます。 なぜそうするかと言えば、開発途上国は通常の商業的条件では必要な資金や技術を獲得する力が弱いからであり、また、開発途上国が発展しなければ世界の平和と安定は維持できないからです。 ODAには3つの形態があります。 (1)供与した資金が返済されないもので、「無償資金協力」あるいは「贈与」と呼ばれています。 (2)供与した資金が返済されるもので、「有償資金協力」と呼ばれています。日本の場合、通常日本円を供与するので「円借款」とも呼ばれています。 (3)資金でなく技術が供与される「技術協力」です。