ハーレーのモデルチェンジが少ない理由は? デザイン部門トップに聞く
ハーレーダビッドソンはバイクをデザインする際、世界的なトレンドをどのくらい気にしている? ハーレーがなかなかバイクのモデルチェンジを実施せず、時間をかけて熟成を進める理由は? 米国本社でデザイン部門のトップを務めるブラッド・リチャーズさんに気になることをいろいろと聞いてみた。 【写真】ハーレーの「ハイドラグライド リバイバル」からは1950年代へのオマージュが見て取れる
■「パンアメリカ」誕生の背景とは ――現在、バイクをデザインする際にどんなことを考えていますか? リチャーズさん:いつも考えているのは、世界中のどんな体型の人にも適用できるデザインです。特に、エルゴノミクス(人間工学)の観点から乗りやすさを重視した形のモデルをいろいろと作っていますね。例えば、「ソフテイル」はハーレーの中でシート高を最も低くすることができるカテゴリーで、世界中の方に乗っていただけることを目指しています。
――バイクの世界では今、何がトレンドになっていますか? リチャーズさん:大きく2つのことが言えると思います。1つはパフォーマンスです。軽量化などにより、バイクの性能を上げていくことが以前よりもどんどん進んでいますね。もうひとつはオフロードとオンロードの両方を走れる走行性能の高いデュアルスポーツモデルの開発が業界全体で進んでいることです。ハーレーダビッドソンの「パンアメリカ」は、まさにその流れを汲むモデルです。
――「アドベンチャー」はハーレーが進出していなかった領域ですが、パンアメリカの登場によってどんな変化がありましたか? リチャーズさん:それまでのハーレーオーナーは基本的に、舗装された道路を走ることを楽しんでいました。しかし、パンアメリカが出たことで、荒れた路面も走れるようになりました。ハーレーをより楽しんでいただくきっかけになったと思います。 ■時間をかけてバイクを熟成させる理由 ――ハーレーは日本メーカーと比べてモデルチェンジが少ない一方で、長い時間をかけてどんどんバイクを熟成させていく印象です。これにはどんなブランド哲学があるんですか? リチャーズさん:ハーレーはルックス、サウンド、フィールという感覚的な部分をすごく大切にしていて、機能性においてもエモーショナルな部分をとても重視しています。そういった土台をすでに作り上げてきているので、あえてそれを崩して新しいものを作っていく必要はないと思っています。パンアメリカも完全に新しいモデルではありますが、ベースには感覚的な部分を取り入れて、新しいプラットフォームの中でもハーレーらしさを失わずに楽しむことができるかを考慮して開発しています。