湘南はいかにしてパワハラ騒動を乗り越えJ1残留を決めたのか?「チームは分解しかけていた」
新体制下でも連敗は止まらず、11月9日のセレッソ大阪戦で今シーズン2度目の「6」に伸びた。もっとも、シュート数ではセレッソを上回った敵地での一戦は0-1の惜敗だった。明らかに内容が上向きに転じ、試合終了間際に喫した失点で引き分けた同23日のFC東京戦、そして約3ヶ月半ぶりの勝利をもぎ取った同30日のサンフレッチェ広島戦へとつながっていく。 「もともとは残留争いをするような順位ではなかったけど、危機と言っていい状況になったなかで、全員が気持ちをひとつにして戦えたことがよかった。誰が監督になったからではなく、環境が変わったことで選手たちがサッカーに対して純粋に向き合えるようになり、以前から彼らがもっていたフォームをしっかりと取り戻せたのではないか、と」 残留を果たせた最大の要因を、選手たちが不安や迷い、そして呪縛から解放されたことに浮嶋監督は帰結させた。自信を取り戻している手応えがあったからこそ、松本山雅戦で痛恨の引き分けに終わっても、ヴォルティスに先制点を奪われてもすぐに気持ちを立て直せたと齊藤も声を弾ませる。 「J1に残留できるチャンスが僕たちにまだある、という状況の方がすごく嬉しかった。今日も正直、動揺することはなかった。1点を取って引き分ければ残留できるとわかっていたし、僕たちはどちらかと言えば守りに入るよりは、攻めて、攻め続けた方がいいプレーを出せるので」 台風19号の影響で冠水した練習拠点、馬入ふれあい公園サッカー場を10月中旬から使用できないままシーズンを終えた。他チームよりもシーズンの閉幕が1週間遅れたことで、オフの補強戦略などでも「出遅れると思う」と、水谷尚人代表取締役社長も安堵感だけでなく危機感も胸中に抱く。 それでも、クラブ史上で初めてとなる、2年連続のJ1残留を決めてから数時間とたたないうちに、浮嶋監督が来シーズンも指揮を執ることが発表された。体制をしっかりと固めて前へ歩んでいくなかで、緊急ミーティングをどん底からはい上がるターニングポイントへと変えた、喜怒哀楽が色濃く刻まれた今夏以降の軌跡は、必ずやベルマーレを成長させる血肉になるはずだ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)