湘南はいかにしてパワハラ騒動を乗り越えJ1残留を決めたのか?「チームは分解しかけていた」
屈辱的な連敗の間の10月4日には、曹前監督のパワハラ行為を認定するJリーグの調査結果が発表された。リーグから科された公式戦5試合の出場資格停止処分が、活動自粛中にベンチ入りしなかった5試合で相殺されることを確認したベルマーレは、曹前監督の進退を保留している。 2ヶ月近くも続いてきた、宙ぶらりんな状態がようやく解消されるかもしれない――選手たちの思いがかなわないまま、フロンターレに大敗した直後のロッカールーム。緊急ミーティングが開催され、自分たちが置かれた状況に対する、偽らざる思いの丈を打ち明け合った。 自他ともに認める熱血指導で自分たちを高みに導いてくれた、曹前監督を慕う気持ちをほとんどがもちあわせていた。一方でプロを謳う集団として、現状は受け入れがたい。誰かが発した「いまの状況は選手ファーストじゃない」という言葉を、全員が共有できた。齊藤が言う。 「どっちつかずになっていたのは僕たちも、周囲の人たちもわかっていたと思うので。それをただ単にはっきりしてほしかったというか、戻ってきてくれるなら戻ってくるでいいし、辞めるのならば辞めるで早くチームを建て直すことができるのではないか、という話をみんなでしていました」 選手たちの悲痛な叫びが届いたのか。フロンターレ戦から2日後の10月8日に、2012シーズンから指揮を執ってきた曹前監督の退任が発表された。さらに2日後の浮嶋新監督の就任と合わせて、深い霧にさえぎられていた視界が良好になったのだろう。齊藤がさらに続ける。 「しっかりとした(立場の)監督が来てくれたおかげで、チームとしてやりたいこと、やらなきゃいけないことが明確になり、J1に残留するんだ、という気持ちが出てきたことがよかったと思う。正直、みんなあきらめかけていたというか、ちょっと厳しいんじゃないか、J2へ落ちてもしょうがないんじゃないか、という雰囲気がチームのなかに漂っていたので」