中国の「独裁体制」にいったい何が…「習近平の名前」が党中央政治局と人民解放軍の重要文書から消えた!
中央軍事委員会公式文書から「放逐」された習近平
10月30日に公開した「習近平はもうおしまいなのか…中国人民解放軍で『静かなクーデター』!粛清に反抗してとうとう制服組トップが軍を掌握」では、中国人民解放軍が制服組筆頭の張又侠・中国共産党中央軍事委員会副主席を中心に習近平主席に対する「静かな政変」を起こして、それに成功している模様である、と伝えたが、実はこの記事掲載の当日に、「静かな政変」の成功を裏付ける決定的な証拠が、またもや公に出た。 【写真】習近平はもうおしまいなのか…中国人民解放軍で「静かなクーデター」! 10月30日、中国共産党中央軍事委員会弁公庁は「強軍文化繁栄発展のための実施綱領」という軍の正式文書を公布し、その概要が31日の「解放軍報」一面トップに掲載された。 解放軍機関紙一面トップに掲載されることからしても、これは軍事委員会の出す重要文書であるに違いないが、その内容を丹念に読んでいくと、そこにはやはり、大変重大な異変が起きていることが分かる。 五つの段落からなるこの「実施綱領」の概要では、「習近平思想」はもとより、「習近平」という名前すら、いっさい出ていない、という驚きの事態が発生しているのである。 習近平「ワンマン」独裁の下では、これまで、党・政府あるいは軍の公式文書に習近平の名前あるいは「習近平思想」が一度以上に出てくるのが完全なる鉄則であって、いわば絶対不可欠な決まり文句である。しかし今回、中央軍事委員会弁公庁文書において「習近平」が完全に無視されていることは、どう考えても意味重大である。
北戴河会議の前から準備は進んでいた
「強軍文化の繁栄発展」をテーマとするこの「実施綱領」の概要において、「強軍思想」という言葉も出ているが、実は、この「強軍思想」というものを打ち出したのはまさに習主席自身である。「強軍思想」とは要するに、「軍の建設」に関する習主席の一枚看板の思想理念である。だからこそ今まで、「強軍思想」は必ず「習近平」を冠にして「習近平強軍思想」が定番用語となっている。 しかし今回の中央軍事委員会公式文書は「習近平強軍思想」の「習近平」という冠を外して「強軍思想」としているが、それはわざとやったとしか思えず、まるで「習近平」に対する「斬首」を行ったかのような思い切った挙動である。 公式文書は「習近平排除」を行った上で、その代わりに「党の指導」を全面的に打ち出している。「党の創新理論」「党の理論の指導下」、「党の指揮に従う」と「党」という主語を連発している。それは明らかに、解放軍としては「党の指導」に従うが、習近平の個人独裁はもう用がない、との断固として意思を示しているものだと理解できる。 そしてこのような軍の意思表明は、今年7月27日掲載と8月10日掲載の「解放軍報論評」の延長線にあることが分かる。7月27日掲載の「解放軍報論評」は「いま、個別なところでは党内政治生活が正常さを失い、個人は党組織の上に凌駕し、家長制的なやり方で、鶴の一声で物事を決めるようなことが起きている」と、独裁者の習近平主席を暗に批判している。 また8月10日掲載のそれは、「民主的な意思決定はすなわち党組織の集団的意思決定であって、個人的な独断による意思決定があってはならない」と露骨に習近平独裁を批判している。 つまり、例の「北戴河会議」の以前から、解放軍はすでに「習近平独裁排除」の世論的準備を進め、この上で「静かな政変」を行った。そして今、制服トップの張又侠・中央軍事委員会副主席が軍掌握に成功したところで、軍は思い切って公式文書という形での「習近平排除」に踏み切ったわけである。