<新型ロードスター>ベールを脱いだシャシー 100キロ軽量化&アルファ車にも採用
剛性とはトレードオフの軽量化
もうひとつの見所はリアのサブフレーム。左右のサスペンションを繋ぐ黒い太い部材のことだ。現行モデルの場合、左右一対の後ろすぼまりの部材を中央で結んだH型の形状となっている。左右のサスペンション取り付け点を最短距離で結ぶ配置で、剛性が効率良く確保できる理想的形状だが、一方で重量がかさむ。 新型を見れば、デフをまたぐ形でV字型の構造部材を配して上下方向の剛性を確保している。このままでは不足する水平方向の剛性を確保し、また前後方向の位置決めを兼ねるつっかい棒をロアアームの下から左右それぞれに斜め前に伸ばす構造だ。 この構造は、単純な剛性確保面で言えば現行モデルより後退するかもしれないが、今回課題の軽量化が可能になる。軽量化と剛性確保はほぼトレードオフの関係なので、どちらを取るかはっきり決めて、その上でネガに対応する配慮が必要だ。今回のアプローチは軽量化を優先する手法が採られていることがわかる。 鶏と卵の例えに近いが、車両重量が増えればより高い剛性が求められ、剛性を上げるために重量が増える。今回のシャシーは軽量化という明確な目的を定めることで、この重量増加スパイラルを逆回しにした格好になるだろう。
アルファロメオと兄弟車になる布石
もうひとつ面白い工夫がある。今回の方式では、リアのサスペンションセクションを予めアッセンブリーとして組み上げてから車両に取り付けでき、生産性が向上するのだ。販売価格にも配慮が必要なロードスターの設計として八方丸く収めようと苦心していることがわかる。次期モデルのシャシーはアルファロメオ・スパイダーへの採用が決まっているので、サスペンション設計の自由度が高まる構造は上手い落とし所だと言えるだろう。 写真を見た時、エンジンが後退しているような気がしたが、マツダのリリースを詳細に見てみるとやはりそうした記載があった。 ── 歴代MX-5(ロードスターの輸出名)の中で最もコンパクトなレイアウトを実現しながら、エンジンをより車両センターに近づけ、重心をより低く進化させている 写真から見る限り、トランスミッションはまだダミーのようで、完成していないと思われる。こうした部分から見て、今回のシャシーが新型車に搭載されるまでにまだまだ変更される部分は多いだろう。しかし全体を俯瞰して眺めれば、あちこちからリークされてきた情報 ── 新型ロードスターは原点回帰して軽量化を追求したものになる ── は、相当に確からしいと言える。 100キロの軽量化に加え、エンジン搭載位置がより理想化されたロードスター。今回のシャシーお披露目で来年1月のデトロイトまたは2月のシカゴショーでデビューというスケジュールはほぼ固まったと考えていい。その最終スペックを目にするのが楽しみだ。 (池田直渡/モータージャーナル)