サイゼリヤ絶好調、ワタミは再挑戦……円安で海外展開急ぐ外食企業、中国市場での勝算
低価格ブランドを投入
中国市場の難しさに直面し、日本の外食企業は2010年代後半、海外展開の重心を東南アジアや欧米にシフトした。一方で、巨大市場の中国で波に乗ると1000店舗、2000店舗も見えてくる。たとえばスターバックスの店舗数は1996年に進出した日本が1917店、1999年に進出した中国が7093店(直近公表の数字)だ。 だからトリドールもワタミも、一旦撤退した後も再進出の機会をうかがっていたのだ。両社は過去の失敗を教訓に、現地の市場環境に合わせた店舗を展開し捲土重来を図る。 ワタミが出店する「三代目 鳥メロ」は中国のブランド地鶏「清遠鶏」を使った焼き鳥などを提供する。鳥メロは2016年に日本国内に登場した、鳥料理をメインメニューとした低価格居酒屋だ。 現地経済メディア「界面」によると、日本式焼き鳥は2022年からインターネットでの検索回数が増加するなど人気が高まっている。2023年8月に福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出が始まったことで中国で日本食離れが起きるなど、海鮮を売りにしたメニューを出しにくい中で、焼き物料理は相対的にリスクが小さい。 トリドールもうどんを引っ込め、先行プレイヤーが市場を開拓し消費者に定着している豚骨ラーメンを選択した。同社はフランチャイズ展開にノウハウがある中国投資企業と合弁を組み、立地選定やメニューのローカル化を任せることで、スピーディーな出店を目指す。 不動産不況が長期化し消費者が節約志向を強めていることを鑑み、傘下の中でも低価格の業態を出店した点も共通している。「一風堂」のアメリカの店舗がラーメン一杯約3000円にもかかわらず大人気であることがよく報道されているが、トリドールの「ずんどう屋」上海店のラーメン一杯の価格は36元(約750円)で日本の店舗より安い。短期間で200店舗を出店するために競争力の高い価格設定にした。
浦上 早苗