アート・バーゼルとUBSがレポート。データから見るマーケットの「今」とは?
変化を迎えるディーラーの販売戦略と今後の動向
2023年、ディーラーではギャラリー独自の販売機会や導線づくりが売上を左右する大きな要因のひとつとなっていた。ギャラリー、ディーラーの直接取引の割合(オンライン含む)は、2019年の48%から64%にまで増加。ここ2年間で大きく普及率を上げたオンライン販売においても、ギャラリー独自のオンラインチャンネルを中心に、順調に数字を伸ばしている。 オンラインチャンネルはプラットフォーム内での商取引のみならず、顧客の足をギャラリーへ運ばせる導線としての働きもあり、展示会やアートフェアといった対面での鑑賞体験とオンラインというふたつのコミュニケーション経路を既存顧客を超えて展開していくことが、ディーラーにとってますます重要となると言えるだろう。 「The Art Market 2024」がディーラーに行った、当面の懸念事項についての聞き取り調査では、1位が不安定な社会情勢とその影響、2位が既存顧客との関係性維持、3位がアートフェア参加にかかる諸費用の高騰という結果になり「ゆるやかに悪くなる社会」への不安は大きいといえる。また、24年に売上の増加を予測すると答えたディーラーは前年度45%に対して36%と減少、約半数の48%が23年から変化なしと予測した。 しかし、レポートでは、長く続いた高価格帯作品中心のマーケットの逆転によって新しい風がアートマーケットに吹く可能性も示唆されている。アートマーケット全体が、いかに周縁的なアーティストや、多様な地域のステークホルダーを包摂していけるかという点についても、注目していきたい。
Haruka Ijima