アート・バーゼルとUBSがレポート。データから見るマーケットの「今」とは?
2021年以降初めての下降、コロナ以降のV字回復に赤信号か
世界最大級のアート・フェア「アート・バーゼル」とスイスに拠点を置く金融企業のUBSが、毎年恒例となる世界のアートマーケットの動向を調査、分析した報告書の2024年版「The Art Basel and UBS Global Art Market Report 2024」(以降「The Art Market 2024」)が発表された。今回はこの報告書に書かれた内容をもとに、現在のアートシーンの動向と展望について解説する。 「The Art Market 2024」では、2023年のアートマーケットの総売上を推定650億ドル(前年度比4%減)と発表。コロナパンデミックによって一時低迷したアートマーケットは、前の2年間で強い回復力を見せていたが、23年はコロナ以降初めての下降を記録する結果となった。 売上減少の背景としては、金利の上昇、インフレ、不安定な世界情勢などが影響していると推測されており、高価格帯のマーケットでは購買に慎重な姿勢をとる顧客が目立った。しかし、高価格帯の売り上げ減に反して、中・低価格帯の取引数が増加。全体の取引数は上昇を記録した。
市場シェア1位はアメリカが維持、売上は世界的に鈍化
地域別の市場シェアは1位が米国42%(272億ドル)、2位は中国で19%(122億ドル)、3位は英国で17%(109億ドル)、4位はフランスの7%(46億ドル)となった。 地域別の売上を見ても、アート業界における最大マーケットである米国、EUで高価格帯の商取引がもっとも多い英国、そして日本含むアジア全体で売上が軒並み減少しているのがわかる。 このような世界的な市場の鈍化に反し、中国は前年度比9%の売上増加を記録。市場シェア2位の座を英国から取り戻した。都市封鎖の影響で中止になった22年秋オークションの在庫がすべて売却されるなど、上半期の反動需要が大きな影響を与えたと考えられている。また、好調かにみえた中国市場も下半期の売上では減少を記録しており、現在も続く慢性的な不動産不況と経済成長の停滞の影響は大きいといえるだろう。