原発を最大限活用へ 再稼働や建て替え促す 投資意欲向上には「踏み込み不足」と指摘も
政府は17日、エネルギー基本計画の原案で原発を最大限活用する方針を明確に打ち出した。主力電源化を目指す再生可能エネルギーは天候に左右され、安定的な電力供給に不安がある。安定供給と脱炭素を両立する電源として原発を重視する姿勢を示し、事業者に再稼働や建て替えを促す。ただ、原案では原発の活用に向けて十分に踏み込んだとは言い難く、投資意欲が向上するかは見通せない。 政府は原案で、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発を「安定的に発電可能な脱炭素電源」と位置づけ、データセンターや半導体工場など新たな電力需要の増大に合致すると指摘。安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用すると書き込んだ。 再エネは電源として不安定で、現状では発電量が低下した際の調整用に火力発電などを使わざるを得ない。蓄電池などの次世代技術もコストがかさむため、政府関係者は「安定電源としては総合的に原発が絶対安い」と優位性を強調する。中東情勢の悪化で地政学的リスクとエネルギー安全保障が注目される中、計画見直しでは原発の位置づけが最大の焦点だった。 ただ、十分に踏み込めたかは疑問符が付く。原案では、計画に明記してきた「可能な限り原発依存度を低減する」との表記を削除。原発が今後も重要な電源だと明示することで、「原発産業を志す人材を確保する」(経産省幹部)狙いがある。 代わりに盛り込んだのが「特定の電源や燃料源に過度に依存しない」との文言だ。再エネだけでなく原発にも依存しないと読める玉虫色の表現で「原発推進派も慎重派も納得させられる」(与党幹部)ようにした。 原発の新増設を明確に推進することも期待されたが、原案では建て替え要件を緩めて敷地外での建設を認めるにとどまった。脱原発を掲げる公明党との間で、現在の原発総数は増やさないとの〝約束〟があったようだ。 実際、2040年度の電源構成の「2割程度」は既存原発の大半の30基程度が稼働する想定。投資回収の予見ができる事業環境の整備にも踏み込めず、電力業界関係者は新規投資に踏み切れるような「明確なビジョンが欲しかった」と語った。(中村智隆)