原材料高騰で苦境の「丸亀製麺とココイチ」。値上げを続けても“客が離れない”理由
資本を効率的に活用しているココイチ
業績の推移を見ると、今年6月は前年比で売上12%増、客数6.2%増、客単価5.9%増だったが、今年7月は前年比で売上1.9%、客数は-3%、客単価5.1%増と極端に鈍化しており、客数の前年割れは先行きに不安を感じる。8月からの値上げでどうなるか心配だ。 2019年には505円だったポークカレーが今回の値上げで646円と141円上がったのは、節約に苦しむ消費者にはつらいものだろう。若干高くても提供価値を認めていると評価しているさすがのココイチファンも来店頻度が減るのではなかろうかと心配する。ライバル店の少なさがどう経営に影響するかも見ものだ。 株式会社壱番屋は、ココイチを中核(1412店)としており、現在の店舗数は、国内1200店(直営107店、FC1093店)、海外合計212店(直営86店、FC126店)で合計店舗数は 1412店(24年2月時点)となっている。ココイチの店舗売上(24年2月期決算)は国内885億円、海外171億円、総合計1055億円と大台突破している(24年2月時点)。ほとんどがフランチャイズ(国内・海外含めてFC店比率86.3%)である。 株式会社壱番屋(本部)の売上(フランチャイズ収入)は、売上551億円(前年比114.2%)、利益47億円(前年比130.5%)、営業利益率8.6%(前年比114.7%)となっている。財務基盤は自己資本比率が70.2%と安定している。ROEは8.7%と、自己資本比率が高い割には、その資本を効率的に活用し利益を上げているのが分かる。
定説を覆したココイチのブランド価値
日本の国民食のひとつであるカレー。そもそも、カレーは家庭で食べるものといったイメージが定着していた。それぞれの家庭に独自の「我が家のカレー」があり、昭和は特にそうだったものである。経済成長に伴い共稼ぎ世帯が増えることを背景に、忙しい中での家庭の食事は簡便化ニーズが高くなる。 そのため、まとめづくりができて、冷蔵庫に保存しておけば、いつでも食べられるといった、その利便性もカレーが普及した要因だ。その後、核家族化など世帯人数の減少から、家で作らずレトルトカレーで済ませるという家庭が増えてきた。 食品メーカーが開発販売するのは、ボリュームのある市場を狙った標準味のレトルトカレーが多い。その標準的なレトルトカレーに食べ慣れた人たちが増えてきたのもカレー専門店が増えた要因であろう。 そういった環境の変化に適合させ、あえて飽きの来ないカレーを基本メニューにして、来店頻度を高めた上で、辛さや豊富なトッピングを用意し、顧客のほうでカスタマイズさせる工夫が受け入れられたのがココイチであろう。多店舗展開できた原動力は、それらをどの店よりもうまくやり切ったからだ。 夏本番、最もカレーが食べたくなる季節で、安定した需要があるから値上げしても売上の落ち込みは少ないとの判断で、値上げを追随する店も出てくることが想定されるが、業界リーダーであるココイチの価格戦略を、他店は注視しているのは当然だ。