10兆円規模のスタートアップ投資を生み出す「日本版イノベーションエコシステム」の未来
「イノベーションエコシステム3.0」時代のアプローチ
■「イノベーションエコシステム3.0」時代のアプローチ 私たちスクラムベンチャーズは、オープンイノベーションを通じて、日本企業とグローバルスタートアップの新規事業創出を手がけるために「スクラムスタジオ株式会社」を2020年に設立した。上記した「イノベーションへの取り組み」としては、2.0から3.0への移行期に当たる。 スクラムスタジオでは、包括的なアプローチを採っている。具体的には、まちづくりをテーマにした「SmartCityX」、ウェルビーイングの「Well-BeingX」、健康長寿の「AgeTechX」など、複数領域の事業共創プログラムを起ち上げ、さらに地域を絡めたイノベーション創出を支援している。 これらの特徴は、それぞれのプログラムが単なる技術開発や新規事業創出にとどまらないという点だ。SmartCityXでは、IoTやAIなどの先端技術を活用して、より効率的で持続可能な地域社会の実現を目指した。この過程で生まれた技術やノウハウは、まちづくりの基盤となるOSとして機能し、他の地域や分野にも応用可能だ。 Well-BeingXも、個人の健康や幸福度の向上にとどまらず、それを支える社会システムやインフラの在り方にまで踏み込んでいる。これは、まさにウェルビーイングを中心に据えたまちづくりのOSと言えるだろう。 Well-BeingXに参画する東京建物が再開発組合と一緒に推進している「東京駅前八重洲一丁目東B地区市街地再開発事業(八重洲プロジェクト)」は、革新的なオフィス空間の実現に向けた先進的な取り組みだ。2025年度竣工予定のこのプロジェクトでは、ウェルビーイングの向上に寄与する高層ラウンジ「(仮称)YAESU SKY LOUNGE」の整備が計画されている。 具体的には、プログラム採択スタートアップであるクラフト温泉製造メーカー「Le Furo」は、温泉ミストによる湯治体験を計画している。さらに、マインドフルネスアプリ「Upmind」は瞑想用の個室空間を設けるなど、オフィス空間に独自性の高い施設計画を実現しようとしている。 この八重洲プロジェクトは、大企業とスタートアップの協業が具体的な形となって特定の場所で実装される「イノベーションエコシステム3.0」の好例となるだろう。