サウジアラビア戦でゴールを決めて喜ぶサッカー日本代表の小川航基　撮影：中地拓也

　2026年北中米W杯アジア最終予選・前半戦の天王山と言われた10日のサウジアラビア戦。その試合でダメ押しゴールを奪ったのが、後半31分に上田綺世（フェイエノールト）に代わってピッチに立ち、5分後に伊東純也（スタッド・ランス）の右CKをヘッドで押し込んだ小川航基（NECナイメンヘン）だった。 ■【画像】続々と岐路に……小川航基の得点後にサウジアラビアサポーターが帰る姿と、「観客席の満席＆帰宅後のガラガラ」比較写真■ 　今年3月に4年3カ月ぶりの代表復帰を果たして以来、エース上田と併用されている小川、最終予選突入後はスタメンの上田と交代し、終盤からギアを上げる役割を託されている。その結果、今年だけで4得点とハイペースのゴール量産を見せている。 「このチームの中で一番点を取れるのは自分だと思っている」と口癖のように言う27歳のストライカーは有言実行のパフォーマンスを披露する。後半36分のリスタートは相手に負傷者が出て、数的優位の状況に立っていた。日本はそれを逃さず、遠藤航（リバプール）、谷口彰悟（シントトロイデン）、町田浩樹（サンジロワーズ）がしっかり敵をブロック。空いたところに背番号19は飛び込んで、おいしいところを持っていた。この瞬間、キング・アブドゥラ・スポーツ・シティは失意に包まれ、結集したサウジの大観衆を一瞬にして帰路についた。 「僕が別に帰らせるつもりはなかったですけど（笑）。黙らせるじゃないけど、アウェーでそれをやれる選手は数少ないし、今日はいい1点だったと思います」と本人も満面の笑みを浮かべていたが、確かに得点センスは非凡というしかない。

■「いつチャンスが来ても『俺だろう』っていう気持ちでいた」

「もう最初から『俺でしょ』って感じでしたけど（笑）。いつチャンスが来ても『俺だろう』っていう気持ちでいたので。口だけでは誰でも言えることなので、それを現実にできるかどうかが選手の真価。今日はそれを示せてよかったと思います」と彼は単なるエゴイストではないことを実証したのである。 　もともと小川は森保一監督が率いていた東京五輪代表のエース候補筆頭だった。彼が当時所属していたジュビロ磐田で足踏み状態に陥った傍らで、上田がグングン成長したことから、現在の序列になっている。 　ただ、指揮官は「航基の得点センスは頭抜けている」という事実をよく理解していたし、呼び戻した以上は使うという強い決意があったはず。今後も当面は上田と小川を併用しながら、最終予選を乗り切っていく構えなのだろう。 　2人は揃って得点力と前線で起点になる能力を兼ね備えている。小川は守備のハードワークが足りないと言われてきたが、最近はその部分も大きく改善され、サウジ戦でも献身的なプレスバックを見せていた。 「前線の選手の守備意識っていうのは、それがないと本当の代表に今は入れないようになっているんで。それを監督が示してくれてっていうのは、選手としてはやらなきゃいけない規律と決まりがあるっていうこと。そういうチームはやっぱ強いんで」と堂安も強調していたが、そのくらいの明確な基準があった方が、小川のようなタイプにはいい。この調子でどんどんスタンダードを引き上げ、2大看板エース体制が機能するようになれば理想的だ。