打ち上げ成功! H3ロケット雌伏からのリベンジ
ただ、衛星を軌道投入する能力そのものはロケットにはあり、小型の副衛星を2基搭載することになりました。1つはキヤノン電子が開発した「CE-SAT-1E」で、地上の写真を撮影したり、衛星の位置を非常に高い精度で測定します。もう1つは経済産業省から委託された「TIRSAT」。熱赤外センサーで工場などの熱源を感知するというものです。将来的に世界の主要生産地域の工場等稼働状況を把握する仕組みの構築を目指します。 ちなみに、VEP4に2つの小型衛星にフェアリングというカバーを含めた重量と重心は、1号機でのそれと合わせています。1号機と同じ状態で飛行を検証するというわけです。 岡田プロマネは打ち上げ前の記者会見で「打ち上げ失敗は宇宙計画に大きな影響を与えてしまった。何とかここを挽回したいという想いでこの10ヵ月ほど力を合わせて頑張ってきた」と話していました。宇宙基本計画への影響を最小限にしようという配慮がうかがえます。 天候の悪化で2月15日の打ち上げが延期され、2日後の17日、皆が祈るなか、ついにその日を迎えました。午前9時22分55秒に打ち上げ。きれいな軌道を描きます。打ち上げから5分あまり、午前9時28分過ぎには第2段エンジン第1回燃焼開始のアナウンスがあり、ライブ中継から「鬼門を突破しました」のコメントがありました。 そして、さらに約12分後、午前9時39分過ぎに「CE-SAT-1E」が分離。冒頭お伝えした、総合指令棟でスタッフの歓声と抱擁する場面が飛び込んできました。緊張から歓喜に変わった瞬間でした。
打ち上げから3時間あまり、午後0時半過ぎから記者会見が始まりました。ロケットの軌道投入、「CE-SAT-1E」の分離の他、「TIRSAT」「VEP4」の分離が確認されたことも明らかにされました。 「本当にお待たせいたしました。ようやくH3がオギャーとうぶ声をあげることができました」 岡田プロマネの開口一番、笑顔のコメントです。その後、心境を聞かれ、「きょうだけの話、ものすごく肩の荷が下りた気がします」「ロケットはこれからが勝負。しっかりと育てていきたい」と述べました。自己採点では開発をともにした三菱重工業の新津真行プロジェクトマネージャ(以下 新津プロマネ)と目を合わせ「いいですね? 満点で……満点です」、新津プロマネも「100点満点だと思います」と応じました。 一方で、打ち上げ前の記者会見で岡田プロマネは「JAXAとして成功、失敗はお伝えしないのではないか」と話しており、私は改めて今回「成功」と表現すべきか確認しました。 「こういう質問が来ると思っていたので、自分なりに頭の体操はしていましたが……成功しました」と岡田プロマネは明言。その上で「成功と失敗の境目は難しい。直後にわからないこともいろいろある。今回の結果は即成功と報告できると思う」と胸を張りました。