syrup16g『遅死11.02』 20年ぶりの日比谷野音ワンマン開催!「また会えてうれしいです。来年も会いましょう」
2024年11月2日(土)、日比谷野外大音楽堂にて、syrup16gがワンマンライブ『遅死11.02』を開催した。インディー・リリースした初期曲や、未発表曲などを新たにレコーディングし直した6作目のアルバム『delayedead』を、2004年9月22日にリリースした直後の10月10日に、syrup16gは、日比谷野外大音楽堂で『遅死10.10』というワンマンライブを行っている(後に同名のライブDVDもリリース)。『delayedead』の楽曲を中心にしたこのライブから20年経ったのを記念して、同じく『delayedead』の楽曲を軸にしたライブを、同じ日比谷野外大音楽堂で行う、というのが、この日の趣旨である。 【全ての写真】syrup16g、20年ぶりの日比谷野音ワンマン(全12枚) それ以降も、解散(2008年)の前に1作、再始動(2014年)以降に4作、syrup16gはアルバムをリリースしていることもあるだろうし、2004年と2024年で、まったく同じ内容のライブをやったわけではない。が、「クロール」「前頭葉」「Heaven」「もういいって」と、1曲目から4曲目まで同じ曲が演奏されたほか、「翌日」「真空」「明日を落としても」等、『delayedead』からの楽曲を軸にしたステージになった。 定刻から5分遅れの17:35、メンバー3人=中畑大樹、キタダマキ、五十嵐隆がステージに登場。前述のとおり、20年前と同じ4曲を並べていく形で、ライブが始まる。「クロール」で中速をキープし、「前頭葉」でアクセルを踏み込み、そのままの勢いで「Heaven」へ、といった流れである。「Heaven」の後半では五十嵐のボーカルが“歌”と“絶叫”のハイブリッド状態に。続く「もういいって」の“夢は叶えるもの 人は信じ合うもの 愛はすばらしいもの もういいって もういいって”というリフレインは、20年経った今の方が、さらに鋭く深く聴き手に突き刺さるように感じる。 なお、この日の天候は、台風21号から変わった温帯低気圧が西日本→東日本へと進み、東京の18時台の降水量が1時間で19ミリ、というおそろしい予報が一時は出たくらいの、季節外れの大雨だった。が、結局、ピーク時で1時間6ミリくらいに収まり、それ以降は降り方が徐々に弱まって、終演の頃には小雨になっていた。ただ、「もういいって」の後に、この日最初にMCがはさまれたあたりが、そのピーク時の「1時間6ミリ」のときだったこともあってか、五十嵐隆の第一声は、「ありがとう、ごめんね!」だった。続いて中畑大樹が「大変ねえ、みなさん。ありがとう、よく来た!」。ステージの上も大変だったと思うが、オーディエンスの様子は、さらに大変に見えていたようである、3人には。 次は『delayedead』を代表する曲であり、UKプロジェクトからの『COPY』よりもさらに前、TiNSTAR RECORDSから出た4曲入りEP『Free Throw』の1曲目だった、つまりsyrup16gが最初に世に放った曲である「翌日」。syrup16g屈指の軽やかさを持つこの曲の次は、syrup16g屈指のポップさを持つ「生活」へ。五十嵐、しばしギターをつま弾いた後に「おおう!」と吠えてから、イントロのリフを弾き始める。 そこから、「真空」→「Breezing」→「エビセン」と、『delayedead』での曲順(「真空」→「エビセン」→「Breezing」)をちょっと変えてプレイしたのは、「真空」と「Breezing」で激しい方向でのヤマを迎えた後に、「エビセン」と「明日を落としても」で、スローな方向のヤマを作る展開にしたかったのではないか、と思う。「エビセン」を歌い終わったところで、五十嵐、ひとこと「ありがとう」とはさむ。 「明日を落としても」では、時折しゃがれつつメロディを形にしていく五十嵐隆の声に寄り添うように、中畑大樹がハモリをつけていく。この曲の後半でも、五十嵐のボーカルは“歌”と“絶叫”のミックス状態と化し、最後の“Do you wanna die?”では、完全に絶叫になった。 「つらいのはこっちだって思ったんですけど......」と、雨の中タフな状況でがんばるオーディエンスたちを見てつぶやき、「つらいことばっかりですね。すみません。楽しい日にしたかったんですけど......なんか、野戦病院みたいになっちゃって」と伝える五十嵐隆。大丈夫です、そもそも楽しい気持ちになりたくてsyrup16gを観に来たこと、一度もないので。と、言いたくなった。