「緑内障」による失明のリスクと対策を眼科医が解説 症状に気づいたときには末期!?
緑内障の初期症状とは? どのように進行していくの?
編集部: では、緑内障の初期症状について教えてください。 鈴木先生: 視野自体は狭くならず、視野の中に「暗点」と呼ばれる見えない点ができます。ほとんどの場合、この時点では自分では異常には気づきません。 編集部: そこから進行するとどうなるのですか? 鈴木先生: 進行に伴い暗点が拡大し、視野の欠損(見えない範囲)が広がり始めます。視野欠損はわずかな部分から始まり、ゆっくりと進行していくので、この段階でもご自身で気づく方はわずかです。 編集部: 視野が欠けても気がつかないことが多いのですか? 鈴木先生: そうなんです。とくに片目だけの場合、視野が欠損していても、欠損していない方の目が補ってくれることが多いため、失明寸前になっても気がつかないというケースもありますので注意が必要です。 編集部: さらに進行するとどうなるのですか? 鈴木先生: 鮮明に見える範囲が狭くなっていき、日常生活にも支障をきたすようになります。こうなると気がつく方も多いのですが、この時点で緑内障は末期に分類されます。さらに放置すると失明に至ります。
緑内障、失明しないための対策とは?
編集部: 失明しないためにはどうしたら良いのでしょうか? 鈴木先生: 早期発見が大事なので、眼科での定期検診が最も効果的です。特に40歳を超えると発症リスクが大幅に増加するため、たとえ自覚症状がなくても、40歳以降は少なくとも年に1回は検診を受けることをおすすめします。 また、ご家族に緑内障の方がいらっしゃる場合、強い近視のある場合などは、とくに意識して検診を受けるようにしましょう。 編集部: ほかに、失明を回避する対策はありますか? 鈴木先生: 早期に発見できた後も注意が必要です。緑内障の治療は「完治させる」のではなく、「進行を遅らせる」「出来るだけ現状を維持する」のが目的ですので、治療を開始したからといって、何かが改善するわけではありません。 治療の効果がわかりにくいため、患者さんの中には途中で治療を辞めてしまう方もいますが、治療を辞めると緑内障はまた進行してしまいます。緑内障の診断を受けたら、とにかく治療を続けることが大事です。 編集部: ずっと治療を続けなければならないのですね。 鈴木先生: 特に、比較的若いうちから発症したケースは注意が必要です。緑内障の進行スピードには個人差がありますが、単純に考えると早期に発症する緑内障の方が、発症してからの経過が長くなるため、失明に至る確率は高いのです。 せっかく発見できたのですから、効果がわかりにくくても、治療はきちんと継続しましょう。 編集部: 具体的にはどのような治療があるのですか? 鈴木先生: 眼圧を下げるための点眼薬があります。まずは1剤から開始し、進行を認める場合は2~3剤を併用することになります。 それでも進行を抑えられない場合、以前は手術が選択されていたのですが、最近は緑内障レーザー治療(SLT)などの比較的侵襲の少ない方法も出てきています。 編集部: 最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあればお願いします。 鈴木先生: 緑内障は一度発症すると視野障害が戻ることはなく、進行すると失明のリスクもある疾患ですが、早期に発見して治療を続ければ、失明を回避することは十分可能です。 早期に発見するために、40歳を過ぎたら定期的に眼科で検診や緑内障の検査を受けるように心掛けましょう。特に強い近視がある方や家族に緑内障を患った方がいる場合は、積極的に検査を受けることが大切です。