「3度目の正直」なるか 台東区が世界遺産登録を目指す国立西洋美術館
2009年、2011年の審議では登録されず
政府は世界遺産認定を後押しするため、2007年12月に国立西洋美術館を国の重要文化財に指定。翌年には、世界遺産への推薦を決定しています。しかし、政府の後押しは実らず、2009年に世界遺産を認定する諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」から「記載延期」との勧告がなされました。 しかし、フランス政府も台東区もあきらめませんでした。フランス政府の主導で、推薦書「ル・コルビュジエの建築作品」の見直しが行われたのです。その結果、新たにインドの1資産が加わり、7か国17資産で世界遺産に推薦されることになりました。 イコモスからの指摘を受けて、台東区は国立西洋美術館の東側にある緩衝地帯を拡大しました。これは資産周辺の環境や景観を保護する目的です。些細なことですが、こうしたことが世界遺産の認定を得るためには欠かせません。 2011年、再び世界遺産に挑戦することになりましたが、イコモスからは「不記載」という勧告がなされました。前回の勧告が「記載延期」ですから、それよりも悪い結果です。 再起を期すため、フランスや関係各国は協力体制をさらに強化。ル・コルビュジエの普及啓発にも力を入れました。ル・コルビュジエは世界的にも有名ですが、日本国内における知名度はそれほど高くないのが実情です。そうしたことから、台東区はPR活動に特に力を入れました。 「台東区では、区民にル・コルビュジエを知ってもらうため、小学生の親子連れを対象にしたワークショップを年4回開いています。このワークショップでは模型キットを使い、工作を通じてル・コルビュジエが考えた“ドミノシステム”を学ぶものです。また、ル・コルビュジエは建築分野のみならず絵画や版画、彫刻、インテリアにも精通した人物ですので、国立西洋美術館が美大生や建築関係の学生を対象に建築ツアーを実施しました。ほかにも、浅草のサンバカーニバルやかっぱ橋道具まつりといったイベントでも横断幕を持ってパレードするなど、PR活動も定期的に実施しています」(同)