京都立近代美術館で開催の「LOVE ファッション─私を着がえるとき」展──人間が服を着ることの意味について再考する
18世紀の衣装から、コム デ ギャルソン、マルタン・マルジェラまで。多くのファッション、アクセ類、アートが一堂に会する特別展「LOVE ファッション─私を着がえるとき」が9月13日より開催。京都国立近代美術館(MoMAK)と京都服飾文化研究財団(KCI)が共同で開催し、ファッションとの関わりにみられるさまざまな「LOVE」のかたちについて考察する。 【写真を見る】京都国立近代美術館に足を運んでファッションとの関わりに見られる「LOVE」のかたちについて考えよう!
京都国立近代美術館(MoMAK)で開催される「LOVE ファッション─私を着がえるとき」は、京都服飾文化研究財団(KCI)が所蔵する18世紀から現代までの衣装コレクションを中心に紹介する展覧会だ。ファッション約100点(うち約25点が男性服)、アクセサリー約20点、アート40点強に及ぶ展示を通して、人間の根源的な欲望を照射するアートとともに、ファッションとの関わりにみられる多様な「LOVE」のかたちについて考える。 MoMAKとKCIは、1980 年の「浪漫衣裳展」以来、これまで8度にわたって協業で展覧会を開催しており、日本における「美術館における衣装展」という分野を牽引してきた。そんな両者による9回目の展覧会となる同展では、人間の根源的な欲望である「LOVE」と、それがファッションにどのように反映されてきたかを5つのテーマ(自然にかえりたい、綺麗になりたい、ありのままでいたい、自由になりたい、我を忘れたい)で探求する。 「綺麗になりたい」のセクションでは、19世紀の身体美の要を担ったコルセットや、布地の芸術作品として卓越した造形で魅惑するクリストバル・バレンシアガなど20 世紀中葉のオートクチュール作品を中心に展示。まだ見ぬシルエットを追求するヨウジヤマモトやジル・サンダーなどの現代ファッションとともに、衣服のかたちに現れた多様な「美しさ」の想像力を紹介する。一方、「自由になりたい」のセクションでは、アイデンティティの変容を描いたヴァージニア・ウルフの小説『オーランドー』に触発されたコム デ ギャルソン2020年春夏コレクション、川久保玲が衣装デザインを担当したオペラ作品《Orlando》(2019年)の舞台映像などを紹介。異なる時代に制作された文学と衣服に通底する、アイデンティティの物語への普遍的な問いかけを探る。 また、多様な「私」のありようを表現した現代アーティストたちによる作品も紹介。たとえば、「ありのままでいたい」のセクションでは、身近な友人との日常を切り取り、ありのままに生きることを肯定するヴォルフガング・ティルマンスの写真、現代社会を生きる女性のリアルを描写した松川朋奈の絵画などを展示する。 なお、これまでKCI×MoMAKのファッション展では、藤本壮介や元木大輔などの建築家による、展覧会コンセプトに相応しいユニークな展示空間を実現してきたが、今回の展覧会ではグラフィックデザインに岡﨑真理子、会場デザインに井上岳、齋藤直紀、棗田久美子、赤塚健による建築コレクティブのGROUPを起用。若手の新鮮な感性によるビジュアル・会場デザインもぜひチェックしたい。 ファッションは「万華鏡のようにカラフルな世界」だが、万華鏡の角度をほんの少し変えるたびに異なる風景が現れる。清濁併せ持つファッションの深みは、決して完璧ではない私たちの姿をも浮き彫りにするが、完璧でないことを否定するのではなく、それでも装うことをやめられないことの面白さについて改めて考える機会を与えてくれるはずだ。 同展は、京都展のあと、熊本市現代美術館、その後、東京にも巡回する。 LOVE ファッション─私を着がえるとき 会期: 9月13日(金)~11月24日(日) 会場:京都国立近代美術館(岡崎公園内) 京都市左京区岡崎円勝寺町 時間:10:00~18:00、金~20:00まで ※入館は閉館の30分前まで 休館日:月曜 ※ただし9月16日(月祝)、9月23日(月休)、10月14日(月祝)、11月4日(月休)は開館。翌日火曜は休館 観覧料:一般 1,700円、大学生 1,100円、高校生 600円 https://www.kci.or.jp/love/ ※熊本市現代美術館(12月21日~2025年3月2日)、その後東京に巡回予定
文・長谷川あや