長嶋茂雄氏を手玉に取った平松政次氏の「カミソリシュート」誕生のきっかけは“謎のおじさん”だった!? 他の投手にはできない投げ方
目が覚めた長嶋氏の場外ホームラン
徳光: 長嶋さんとの一打席一打席は結構鮮明に覚えているものですか。 平松: 長嶋さんの一発目のホームランは川崎球場。 長嶋さんがネクストバッターズサークルにいるだけで後光がさしてるんですよ。「うわー、長嶋さんがいる」って。それだけで足がびびってきて、子供のようなファン的な気持ちで投げてたんですけど、あるとき川崎球場で内角のカーブをレフトに場外ホームラン打たれたんです。 すごいホームランだったんです。「平松よ、こんなボールを投げてたら、いつでも打つよ」というようなホームラン。長嶋さんがベースを一周しているときに、そういうショックを受けたわけですよ。 徳光: ある意味で目覚めさせた。 平松: そうなんです。「そうか。今まで安易な気持ちで投げてた。そりゃ打たれるわな」と思って。そこから「気持ちを切り替えなきゃいけない。そうしないと、プロ野球じゃもたない」と思ったくらい、本当に衝撃を与えられましたよ。
長嶋氏の記憶に残りたい
平松: 長嶋さんと対戦して打たれてるばっかりじゃ、「平松はたいしたことない」と思われるじゃないですか。 もう抑えに抑えて「平松ってこんなにいいピッチャーなのか。これは打てない」。長嶋さんがユニホームを脱いときに「平松ってすごくいいピッチャーだった」と心に残っててもらいたい。そのためには、絶対打たせてはいけないと思って。巨人対平松じゃなくて長嶋対平松、私なんです。 だから、本当に長嶋さんには申し訳ないことをしたなって。ほとんど打たれてないんでね。 徳光: 長嶋さんとの対戦成績は、181打数で35安打、通算打率1割9分3厘。33奪三振でホームランは8本しか打たれてない。いかに長嶋キラーであったか。巨人キラーであると同時に長嶋キラーであったということですよね。 平松: 周りの人はキラーと言いますけど、私は長嶋さんに「平松はいいピッチャーだ」と思われたいためにやってたんですよ。 いまだに長嶋さん、好きだもん。本当に長嶋さん好きだからね。 (BSフジ「プロ野球レジェン堂」 24/5/14より) 【後編】へ続く
プロ野球レジェン堂
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