熊本市の中心街に集まるカラス、「仲間に警戒を促す鳴き声」をスピーカーで流すと…一斉に飛び立つ
例年11月から翌3月にかけて中心市街地で越冬するミヤマガラスのふん被害を軽減しようと熊本市は、カラスが仲間に警戒を促す鳴き声を音声で流す対策を始めた。昨年度は飛来数が半減する効果を上げた取り組みで、市は「ねぐらを郊外に移し、市街地の景観や衛生環境を改善したい」としている。(石原圭介) 【写真】夕暮れにねぐらに戻ったミヤマガラス
同市中央区の中心街で2日夜、巡回中の職員とアルバイトの学生らが、ジュラルミンケースほどの大きさの箱形の装置を歩道の木の下にセットした。スピーカーから鳴き声が流れると、枝にとまっていた数十羽のカラスが一斉に飛び立って上空を旋回し、別の場所へ移っていった。
ミヤマガラスは中国大陸で繁殖し、越冬のため飛来する。従来は郊外の山などをねぐらとしていたが、2018年頃から市街地の樹上、ビルの屋上などに滞在するようになった。市鳥獣対策室は「天敵となる猛禽類などがいないからではないか」と推測する。
日中は郊外の田んぼなどで稲のもみや昆虫を食べて過ごし、日暮れとともに市街地に戻る。下通アーケード周辺や田崎市場北側などを中心に被害が出ており、市民からは観光への影響を懸念する声も上がっているという。
同対策室は20~22年度の実証実験を踏まえて、昨年度持ち運びができる移動式と固定式の音声装置を導入。当初8000羽いた飛来数が、2か月で半減する効果があったという。移動式はカラスの分布に応じて設置場所を変更できる利点があるが、人が設置したものだとカラスに見破られた場合、効果が薄れる可能性があるという。姿を見られない警戒などが必要だ。
今季は固定式は10か所に置き、複数の音声を使うことでカラスが音に慣れるのを防ぐという。来年2月下旬まで続ける予定だ。
翌冬には再び飛来するため、継続的な対策が必要になる。同対策室の清野陽介室長は「カラスも命がけで海を渡ってくる。『市街地は安全ではない』という意識を植え付けて、ねぐらを移動させたい」と話した。