インボイス制度、負担増を訴える声根強く「事務手続きだけが増える世紀の愚策」<アンケート結果>
2023年10月に導入されたインボイス制度は、個人事業主を含む小規模事業者や経理現場などで混乱が予想されていました。 税理士ドットコムでは、登録税理士とユーザー(法人・個人事業主)に対して、インボイス制度の実情について調査を行いました。 その結果、ユーザーである個人事業主のうち約半数が適格請求書発行事業者になっておらず、「今後もなる予定がない」という人は38.1%に上りました。また、税理士の約95%、ユーザーの約56%から「負担が増えた」との回答が得られました。制度が浸透していない実態が明らかになり、廃止や改正など抜本見直しを求める声も上がっています。 ●調査概要 機関:プロフェッショナルテック総研(弁護士ドットコム株式会社内) 方法:税理士ドットコム®会員を対象にアンケートを実施 対象:税理士ドットコム®のユーザー272名(個人事業主210名・法人62名)、登録税理士103名 期間:2024年6月18日~7月2日 【結果サマリ】 <適格請求書発行事業者の登録有無> ・登録していない個人事業主が約45% <業務量の負担> ・税理士の94.9%が「増加した」と回答 ・ユーザー56.6%が「増加した」と回答 <制度の廃止・改正求める声> ・税理士・ユーザーともに半数以上 ●適格請求書発行事業者への登録は進まず 個人事業主のユーザーに適格請求書発行事業者への登録をしたかどうかを聞いたところ、免税から課税に移行して適格請求書発行事業者への登録をしたのは82名(39.0%)。一方、登録していない人は96名(45.7%)で、半数近くを占めました。このうち、今後する予定は16名(7.6%)、今後もする予定がないは80名(38.1%)でした。 なぜ登録しないかを複数回答で尋ねると、多い順に「ならなくても取引が継続しているから」が55名(61.8%)「金銭的に損をすることになるから」36名(40.4%)「制度そのものに反対だから」29名(32.6%)となっています。実害がないということが登録をしない理由になっているようです。 ●税理士・ユーザーともに業務の負担が増加 税理士にインボイス導入後に業務量が増えたかどうか尋ねると、ほぼ全ての税理士が「増した」と答えました。「増した」と回答した中でも、大幅増(1.5倍以上)が最も多く46名(44.7%)で、「1.2倍~1.5倍」が25名(24.3%)、「1.0倍~1.2倍」が27名(26.2%)でした。内訳を聞くと「領収書の確認」「請求書の確認」「記帳代行業務(記帳業務、仕訳の確認)」との回答が多く、主に「細かい作業」が増えた実態が明らかになりました。 また、ユーザー側では増加したと回答した数は税理士ほど多くないものの、「増加」の比率は約半数に上りました。大幅増(1.5倍以上)が48名(17.6%)で、「1.2倍~1.5倍」が44名(16.2%)、「1.0倍~1.2倍」が61名(22.4%)でした。「変わらない・減った」が68名(25.0%)いるのは、そもそも適格事業者への登録が進んでいないことが背景にあるとみられます。 ●ユーザー・税理士ともに抜本改正求める声強く 制度開始当初から混乱が予想されていたインボイス制度ですが、いまだ浸透していない実態が見えてきました。税理士、ユーザー共に「インボイス制度について、行政が取り組むべきこと」について複数回答で聞いたところ、いずれも税理士の54名(52.4%)、ユーザーの193名(71.0%)が「制度の廃止も含めた抜本的改正」を求める声がトップとなりました。 ユーザー側からは、「取引先から登録強要されたら廃業する。こんなことで日本は衰退するだけだ」「無駄な時間や経費など使わせて、日本を停滞させることをしていることに憤慨」「生産性は上がらず、事務手続きだけが増える世紀の愚策」など、強い不満が出ていました。 また、「なぜ税理士が反対しないのか疑問」「悪質な税制には税理士に対抗してほしい」など、税の専門家によるアクションに期待する声もありました。
弁護士ドットコムニュース編集部