「世帯年収600万円以上」と「300万円未満」子どもの体験格差を示す衝撃データ
● 「体験」にかかるお金は 年間1万円弱から8万円超 子どもたちが様々な「体験」の機会を得るためには、具体的にはどの程度のお金が必要なのだろうか。低所得家庭を中心に、ときにあきらめざるを得ないこともある「体験」、その値段はそれぞれの分野ごとに、大体いくらくらいかかっているのだろうか。 保護者の回答をもとに、何らかの習い事や体験活動に参加するにあたって、過去1年間に各家庭で実際に支出された金額をまとめたのが、グラフ4だ。 まずわかるのが、概ね毎月の費用がかかる「放課後」の体験(クラブや習い事など)のほうが、1回ごとに費用がかかる「休日」の体験(キャンプなど)よりも、年間での支出額がかなり大きくなっているということだ。 前者の「放課後」の体験については、スポーツ系と文化系のどちらも、大体同じくらいの費用がかかっている。年間で平均8万円超だ。その費用の中には、毎月の月謝に加えて、スポーツ用品や楽器などの用具代、また遠征や合宿、発表会などの費用が含まれる場合も少なくないだろう。 他方、「休日」の体験については、最も高い「自然体験」でも3万円弱で、「放課後」の体験にかかる年間の費用に比べて半額以下になっている。加えて、お金のかかりやすい旅行から、動物園や水族館、コンサート、さらには地域の行事やお祭りまでが含まれる「文化的体験」が、それらを平均すると2万円を下回る水準。そして、職業体験などの「社会体験」は、1万円未満となっている。
調査では、過去1年間に子どもに何らかの「体験」をさせてあげられなかった経験があると答えた保護者に対して、そうせざるを得なかった理由についても聞いている(複数回答)。 グラフ7は、その回答を世帯年収300万円未満の家庭に絞って集計したものだが、そのうち最も多いのは「経済的理由」で56.3%だった。 補足すると、昨今の物価高騰による子どもの「体験」機会への影響は低所得家庭でより強く出ており、世帯年収300万円未満の家庭ではおよそ半数にまで及ぶ(物価高騰の影響で子どもの「体験」の機会が「減った」と「今後減る可能性がある」との回答の合計)。 ● お金を捻出するだけでは 「体験」をさせられない これまで見てきた通り、低所得家庭の子どもたちの「体験」にとって、「お金」が最大の壁であることはやはり間違いがない。だが、別の壁もある。 再びグラフ7に戻ると、保護者の回答で次に多かったのが、送迎や付き添いなどの「時間的理由」だ。こちらも51.5%と半数を超えている。そして、そのあとに「近くにない」(26.6%)、「保護者の精神的・体力的理由」(20.7%)、「情報がない」(14.3%)、「理由はない」(6.8%)といった回答が続く。