世界を酔わせて(11月2日)
アフリカ大陸のモロッコから、はるか西に650キロ。ポルトガル領マデイラ島は、海と山に囲まれた欧州のリゾート地だ。その美しさから「大西洋の真珠」と称される。ブドウ栽培が盛んで、島の名前を冠した「マデイラワイン」も名高い▼バーテンダーの世界一を決める「ワールド・カクテル・チャンピオンシップ」が現地で開かれ、南相馬市の男性が挑んでいる。晴れの舞台に臨める日本代表は全国バーテンダー技能競技大会の総合優勝者ただ一人。男性は10年がかりで切符を手にした▼茨城県での修業を経て古里に店を構えた。開店から3カ月で震災に遭う。県外に避難を余儀なくされたが、2カ月後に店を再開した。その後の台風や地震、コロナ禍も乗り越えてカウンターに立つ。まるで、地元の復興に寄り添うように。「南相馬の名を広めたい」と競技大会に挑戦し続けて悲願を果たした▼世界大会は予選、準決勝、決勝のステージがある。第一関門は、桜を漬け込んだ国産ウイスキーをレシピに加えたオリジナルカクテルで勝負する。ジャパニーズテイストにこもるのは災害を乗り越えたミナミソウマスピリット。熟成13年7カ月の美酒は審査員をうならせる。<2024・11・2>