「痛い思いをして人は成長していく」 元「育成三銃士」を積極起用の理由 高い走塁意識の裏にあるルール ソフトバンク小久保監督単独インタビュー②
ソフトバンクの小久保裕紀監督(52)の単独インタビュー「一瞬に生きる」の第2弾をお届けします。3、4月で貯金12をつくり、開幕ダッシュに成功。就任1年目、ここまでの戦いぶりを振り返ってもらいました。全3回の2回目は川村、緒方、仲田の元「育成三銃士」のことやホークス伝統の走塁について明かしてくれました。(聞き手・構成=小畑大悟、大橋昂平) ■全3回の① 「5番近藤」は想定外? 柳町達が1軍昇格するには… ◇ ◇ ◇ ―キャンプからアピールを続けてきた川村、緒方、仲田が開幕前に支配下をつかんだ。そのまま開幕1軍をつかみ、大事な場面でも起用している。 「みんな、失敗してうまくなるものじゃないですか。痛い思いをしながらね。怖さを知って。でも、彼らは怖さを知らないのでね。いつミスするんだろうかと思っているんですけど、しないんですよね。ミスしても彼らの成長につながると腹はくくっているので。そうじゃないと、延長12回の同点でいきなり守りに就かせないですよ(4月17日の日本ハム戦で緒方が左翼、川村が右翼)。DHを解除してまでね。安全策を取っていたら(そうはしない)。そういう場面で痛い思いをして人は成長していく。そのためにはしびれる場面で出してあげるしかない。でも、そこでもちゃんと仕事をしているのですごいなと思いますね」 ―試合の中で経験しないと分からない。 「そうです。全然、分からないですね。それは1軍の舞台の最後で守る。先日、川村に『だいぶ慣れてきたか』と聞いたら、『日に日に緊張が増している』と言っていました。それは責任が生まれてきている証拠ですよね。まだ怖いというミスをしていないけど、この大所帯のホークスでスタメンで代表として出て行く責任を少し感じだしているんじゃないですかね。それも成長ですよね」 ―川村は4月28日の西武戦では左飛で二塁への好走塁もあった。 「一塁ベースコーチが本多(内野守備走塁兼作戦)コーチで彼の判断。(昨季まで2軍で)一緒にやっているからこそ脚力もわかるので『ゴー』と言えたと思う。彼(川村)に限らず走塁の意識の高さはホークスの武器なので」 ―主力も含めて、走塁の意識は高まった。 「これはルールにもしている。前のランナーが例えアウトになってもその次のランナーは次の塁に絶対に行っているんです。今年、実は1回だけ行っていないことがありました。その選手には『これはルール違反だからね』とちゃんと伝えている。そこが大切ですね。決めたことを守らせるのが僕たちの仕事なので。前のランナーがアウトになって、後ろのランナーが次の塁まで行っているのはホークスの伝統、文化になってきている。それは1軍はどんどんしないといけない」 ―ルールも徹底している。 「例えば一、二塁で右中間に打ちました。(打者は)ツーベースやなと思って走るけど、一塁ランナーがホームまで回ります。ホームがクロスプレーでアウトになったときは、必ず(打者走者は)三塁にいます。ホークスの選手は。山川が打ったときはタイム的に無理なら行かないかもしれないけど、通常は必ず(三塁まで)来るのがルールなので。また2死三塁から始められるというのがホークスの良さなので。そういう野球は今のところはできています」 ―2、3、4軍にも共有している。 「いいプレーも悪いプレーも下で共有してもらっていますね」 ―4月29日の西武戦では仲田を代打起用。プロ初安打からサヨナラ勝ちの気運もつくった。「盛り上がるだろう」という起用理由も印象的だった。 「考えているわけじゃないんですけどね。ひらめきと直感って違うらしいんですけど。でも、『プロ初ヒットが髙橋光成って格好ええな』とかそんな感じですよ。しかも、つながっていったときに9回裏、延長に入ったらそこに(川瀬)晃が残っている方がいいので。(甲斐)拓也を代えるのを決めていたので、だったら最初に使える選手。そんな感じですよね」 ―安打で起用に応えた。 「ヒットを打つと思っていなかったけどね。実際、その通りベンチも盛り上がった。これは王イズムの一つでもありますけど、来たお客さんに(負け試合でも)何か見てもらって帰ってもらうというところ。(代打で中村)晃を出す場面とか、あとは仲田にしても次世代の選手を見てもらいたいというのは常に思っていますね」 ―中村晃が起用されたときは本拠地が盛り上がる。 「あれは彼の今までのプレースタイルとファンに愛されている証拠だと思いますね。(4月30日の楽天戦で)柳田の代打で8点差でいったのに、あんな歓声もらえる選手はなかなかいないですよ」
西日本新聞社