受験から忖度まで……風刺効かした「地口行灯」、秋祭りに合わせ登場
町々の秋祭りが始まった長野市で、古くから各地に伝わるという地口行灯(じぐちあんどん)の飾りつけが街角ににぎわいを添えています。「地口」とは言葉遊びを指し、市内ではひとひねりした川柳に絵を添えて行灯に描いた地口行灯を街頭に掲げます。10月にかけて市内各所で続く秋祭りでも多数が掲げられ、通りがかりの市民を楽しませます。
27日は長野市の中心市街地・権堂町にある秋葉神社の秋祭り。にぎわう神社周辺に目に付くのが、明かりを入れて掲げられた地口行灯の数々。和紙を張った縦長の行灯に書き込んだ川柳と添えられた絵がユーモラスな雰囲気を醸し出しています。 「御苦労さん 妻にやりたい 感謝状」「夕立へ 酒追加して 雨やどり」「合格に 悲喜こもごもの 預金帳」など身近な事柄を詠んだ地口行灯が商店街のアーケードの支柱に掲げられています。 中には「この国を どこへ導く 気か首相」「行き過ぎた 部下の忖度(そんたく) 仇(あだ)となり」など風刺を効かせた作品も。「今年は真面目な作品が多い」と通りがかりの市民。巧みに描かれた絵も地口を引き立てて好評です。 同神社の地口行灯の展覧は今年で14回目で、毎年市民から作品を募集。決めたテーマの頭と末尾の言葉が入るように川柳を作るのが決まりです。今回は「夢・光」と「ごん堂」がテーマで、「ゆ」と「り」、「ご」と「う」を川柳の前後に据えます。103人から463句集まり、審査の上、審査員の作品も含め100句を掲げました。 2011年の東日本大震災の年は「東日本大震災復興」と「がんばれ日本」がテーマに。北陸新幹線の金沢延伸が実現した2015年は「新幹線」と「長野金沢開通」がテーマになりました。 同神社社務所の長橋公治・事務長は「毎年多くの市民から応募があり、皆さん熱心です」。地口行灯は秋祭りに合わせて24日から28日まで展覧しました。 地口は江戸時代に流行した言葉遊びで、似たような表現で別の意味を示して楽しみます。今でも通じる例では「着た切りすずめ」(舌切りすずめ)などがあります。長野の地口は、川柳で日常の楽しさや苦労、社会時評などを表現する内容が中心になっています。
-------------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説