歌手・山内惠介のおもてなし 心ほどける〝温泉ボイス〟育った土壌には美空ひばりが…「歌の生命力は想像がつかない」
「手嶋葵さんの『ただいま』を聴いたとき、ああ、村松先生のメロディーに自分の声が乗ったら、どんなふうに響くんだろうと。山内君だったら書きたいとお言葉をいただき、また違う扉を開けられるなと思いました。『紅の蝶』でもコブシが自然と入っちゃうんですが、『山内君のこぶしで、僕がグルーブしているものが聴けて本当うれしい』と村松先生に言っていただきました」
どんなジャンルを歌っていても、山内惠介が育った土壌には、「美空ひばり」がある。〝胎教〟でひばりを聴き、3歳のとき母の膝でコンサート見た。生まれて初めて歌ったのは「みだれ髪」だった。
「北海道ツアーの前に、松山千春さんの『長い夜』を覚えながら、ひばりさんの音が聞こえてくるんですよ。最後の<とまどう二人>のところ、♪ふ~たり~が、♪ひ~ばり~なんです。大瀧詠一さんの歌を聴いていても、ひばりさんのエッセンスを感じます。もし歌われていたら絶対合っていたと思うんです」
だが、デビュー当時の一時期、師匠の水森さんからひばり禁止令が言い渡されたことがある。
「子守歌のように聴いてきたので、つらかったですが、『ものまねで歌っている以上、絶対に売れないから。自分の声をまずは見つけて、普通に歌えるようにならないと、ダメだよ』と。確かに、エッセンスとしてひばりさんを取り込めるようになるまでは、かなり時間がかかりました。いまは、ああ、このことをおっしゃってたんだなと理解できます」
6月13、14日に東京芸術劇場コンサートホールで、自身初のオーケストラコンサートを開いた。重厚な管弦楽と、中低音がよく響く歌唱が絶妙に溶け合っていた。
「ありがとうございます。自分の歌を聴いて安心してもらえるように『継続』ですね。いまは、出逢えたいい歌をもっとたくさんの人たちに聴いていただいて、埋もれてしまわないようにしたい。歌の生命力は自分でも想像つかないんですよね。『こころ万華鏡』が千葉ロッテマリーンズの応援歌で使ってもらえたりとか、誰かが見てて、拾い上げてくださる」