「秋の乗り放題パス」で山形へ 左沢線とフラワー長井線をめぐり、豪雨被害で一部バス代行中の米坂線の現状を見る2泊3日の旅
【汐留鉄道倶楽部】10月14日の「鉄道の日」に合わせて、JRの「秋の乗り放題パス」が発売された。連続する3日間、普通・快速の自由席利用で7850円とお得感がある。この切符で40年ぶりに山形県へ。左沢(あてらざわ)線、第三セクターの山形鉄道フラワー長井線(パスは対象外)をめぐり、豪雨被害で一部区間が2年以上バス代行となっている米坂線の現状を見る2泊3日の乗り鉄、撮り鉄の旅に出た。 【写真】金沢発最終のサンダーバードに乗ったら… 「この場を借りて、さようならではなくありがとう北陸線、ありがとうサンダーバード」 粋な車内アナウンスに涙腺がゆるんだ
小田急沿線の自宅から山形まで、山形新幹線「つばさ」に乗れば4時間弱で行ける。今回のフリー切符だと10時間近くかかるが、移動だけの1日ではもったいないので、早めに家を出て途中の宇都宮で〝時間調整〟。次世代型路面電車「ライトライン」に初乗車し、名物のギョーザで腹ごしらえ。その後は黒磯、新白河、郡山、福島、米沢で乗り継いで、19時25分に初日のゴール、山形駅に着いた。 2日目は6時半に駅前のホテルを出発。早起きしたのは、左沢線の「6両編成」のディーゼルカーに乗車、撮影するためだった。非電化のローカル線は1両の単行か2両編成が定番だが、ここでは朝の通学時間帯に「キハ101」が6両で走る。寒河江(さがえ)から到着した4両に、駅構内で待機していた2両を連結。7時2分、早朝の静かな山形駅に豪快なエンジン音を響かせて発車した。 「6両も必要かな?」と思わせる混み具合だった列車に、北山形、東金井と停車するたびに学生がどんどん乗り込んできた。その次の羽前山辺で行き違った山形行きの6両編成には、ドア口まで学生が立っていた。
7時18分、ユーチューブの「前面展望」映像などを参考に撮影地に選んだ羽前金沢(うぜんかねざわ)で下車した。天気は快晴、周囲は田園風景が広がる抜群のロケーションだ。羽前山辺方面に少し戻ったあたりの田んぼで、刈り取った稲穂を棒にかけて天日干ししている絶好の撮影ポイントを見つけた。 稲穂の〝行列〟をアクセントにしてどんな構図にするか、センスが問われるところ。羽前山辺で交換した6両編成が山形で折り返して目の前に来るまで、30分ほどある。線路に近づいたり離れたり、あっちこっちでカメラを構えて頭を悩ませる。シャッターを押す瞬間のドキドキ感もいいが、そこに至るまでの過程もまた「撮り鉄」の楽しみだ。しかし、カメラのSDカードに記録された画像は、思い描いた写真と違うことがほとんど。今回も6両編成の「長さ」と青空を強調しようとするあまり、間延びした写真になってしまった。 再び左沢線に乗って終点の左沢へ。すぐに折り返して山形に戻り、奥羽本線で赤湯着。そこからフラワー長井線で荒砥まで往復した。左沢線、長井線にはそれぞれ「最上川橋梁(きょうりょう)」があり、色は違うが形はそっくり。それもそのはずで、もともとは1887(明治20)年から東海道本線の木曽川橋梁として使われていた鉄橋を、1920年代に分割して移設した。どちらも「近代化産業遺産」に認定されている。木曽川時代から140年近く輸送を支え続けているのは驚きだ。