賛否ある阪神「矢野ガッツ」はスポーツ心理学に基づく正しい勝利手段だった?!
矢野監督は喜怒哀楽を素直に表現している。先日の試合後の涙は、その典型。高妻教授は、その姿勢もプッシュ。また試合後のコメントを含め、敗戦の責任を選手に転嫁せず、選手を怒ることもなく自らの非を認めるという矢野監督の姿勢も評価している。 「元ヤクルト、阪神監督だった野村克也氏のようにぶすっとして喜怒哀楽を表に出さない監督もいます。昔の世代の指導者は無表情の人が多かったですね。でも監督はチームを乗せるためにどうすればいいかを考える必要があります。それぞれのチーム事情により目的は違うでしょうが、矢野監督は、わざと喜怒哀楽を前面に出して喜ぶ、選手を褒めるという選択をしたのでしょう。これも今の選手たちが求めている指導者像なんです」 高妻教授は、集団スポーツの選手アンケートも随時行っており、集計すると「監督に喜んで欲しい」「褒めて欲しい」という声が多いという。 「指導者のパワハラが問題になりましたが、昔は、選手を怒るという指導しかできない人が少なくありませんでした。でも、そういう指導者は選手を説得するだけのコミュニケーション能力がないということなんです。指導能力のない人ほど、勝てば“オレのおかげ”、負けたら“選手のせいだ”とやる。逆に指導能力の高い人は、負けて“オレが悪かった、責任はオレにある”とコメントするのです」 矢野監督の今季の試合後コメントがまさにそうだろう。敗因を「オレの責任」とハッキリと認めるケースが多くミスした選手が救われる形を作っている。 「重要なのは褒めることですが、選手を成長させるためには、ただ褒めるのではなく努力を褒めることがメンタルコーチングの基本です。“ナイスチャレンジだ!”と、その姿勢を褒めることで選手が次に自信を持ってプレーすることにつながっていきます」 涙の会見があった9日の日ハム戦後に矢野監督は、梅野の三盗を「あれはなかなかできないプレー」と、成功した結果以上にチャレンジした姿勢を絶賛した。これも「努力を褒める」というスポーツ心理学上、正しい手法なのである。 高妻教授の見立てでは、これらの矢野監督の行動は、すべて目的を持った意識的なモノらしいが、そうであれば、今のところ矢野監督の描いたビジョン通りにチームは前へ進んでいることになる。あの笑顔とガッツポーズの裏にスポーツ心理学に基づいたしたたかな戦略があるとすればなかなかの“知将”である。 高妻教授は最後にこうまとめた。 「ガッツポーズはメンタルトレーニングなんです。トレーニングなんだから、今後、何があろうと続けていった方がいいんです」 「矢野ガッツ」は、スポーツ心理学に基づいたトレーニングなのだから高妻教授の言葉通り続けていかねばならないだろう。そしてそれが正しい手法であるならば、継続することでチームの成長、進化につながっていくはずなのである。阪神は今日から交流戦首位のソフトバンクとの3連戦。「矢野ガッツ」は何度見れるのだろうか? (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)