賛否ある阪神「矢野ガッツ」はスポーツ心理学に基づく正しい勝利手段だった?!
プロアマ問わず数多くのチームや個人アスリートにメンタルトレーニングの指導を行い、かつては柔道の五輪代表メンバーも担当していた高妻教授は、スポーツ心理学の権威として幅広いネットワークを持っていて、阪神のチーム事情にも明るく「タイガースは2軍でメンタルトレーニングを定期的に取り入れています。矢野監督は2軍監督時代に、そういう教えを学んでいますから目的と意図、効果がわかった上でガッツポーズを意識的にやっているのでしょう」という。 確かにスポーツの成否はメンタルによって左右される。 「野球は失敗のスポーツです。打者は10割打てないわけですから切り替えることが重要なキーワードです。守備も打者もピッチャーがモーションに入ったところから集中して、ひとつのプレーが終わると抜く、そしてまた集中、抜くということを繰り返す競技なので、メンタルの切り替えが重要です。その気持ちを切り替えるためのテクニックを私たちは、いろんなアプローチで指導していますが、ルーティンと言われる行動にも効果があり、“琴バウアー”として有名になった琴奨菊の土俵上での動きなどもそのひとつ。声を出すガッツポーズにも同じような効果があります」 「矢野ガッツ」は、スポーツ心理学上、チーム強化、勝利を求めるための正しいアプローチであるというのが高妻教授の結論だ。 ただ野球の場合、必要以上のガッツポーズは、相手を軽蔑する行為となり、メジャーリーグでは、報復の対象となる。“やってはならないガッツポーズ”も暗黙のルールとして存在する。相手が犯したミスに対するガッツポーズなどが、そのひとつだが、矢野監督は見境なしに、タイムリーエラーや、押し出し死球、時にはリクエストによる結果などでもガッツポーズを行っているように思える。それに対しては一部の阪神OBや球界重鎮などから批判的な声も聞かれる。そこに賛否がある。 筆者もガッツポーズにも品位が必要で相手のミスに対しては行うべきではない、という意見。高妻教授は「高校野球でも県によってはガッツポーズが禁止されているところもあります。解釈の違いですね。マナーや形を重んじるのか、競技力向上を求めるのか。相手を威圧するようなものは問題だと考えますが、自然な形であれば問題はないでしょう」と主張する。