相模原事件「措置入院制度の拙速な見直しは新たな混乱招く」
障害者施設の入所者ら19人が殺害された相模原殺傷事件について、日本障害者協議会の藤井克徳代表が10日、東京の外国特派員協会で会見し、事件後の政府の対応や障害者福祉政策について懸念を示した。 【中継録画】日本障害者協議会の藤井克徳代表が会見 相模原事件を受け
日本障害者協議会の藤井代表が会見
藤井氏は日本の障害者運動のリーダー的存在で、自身も視覚障害がある。藤井氏は「事件後の政府の対応が気がかり」だという。容疑者は2月に、「自傷他害の恐れ」があるとして「措置入院」したが、2週間後に退院。その後、犯行に及んでいるため、相模原市の入院解除などの対応を疑問視する声も出ている。そうした背景もあり、政府は措置入院制度を見直すと報じられたが、「拙速な対応はむしろ新しい混乱招く」と述べた。 また、厚労省が障害者施設の防犯体制強化を打ち出していることについても、「防犯対策のみの強化は地域との隔絶のきっかけになりかねない」と異議を唱える。精神障害者たちも「隔離政策が一層強まっていくのではないか」と心配しているという。 現在の障害者施設の現場は危機的な状態だという。福祉労働者の待遇は「極めて劣悪」(藤井氏)に抑えられており、そのため、職員が集まらず、慢性的な人不足や専門性の欠如、正規職員が足りないことで職場の人間関係が希薄になるなどの影響が出ていると指摘する。 政府の対応ではないが、メディア報道で犠牲者の氏名が伏せられていることにも違和感を感じるとした。「今のままではグループの死、顔のない死となり、一人ひとりを悼むことができない」。個人個人で事情もあるが、「直感的に死後まで続く差別と感じる」と語った。 藤井氏は、国の障害者政策は、障害者らを施設に押し込める現在の「社会防衛、集中管理的な視点」から決別して、「障害者が地域で暮らすための政策の拡充」を提案する。欧米で進められている「施設から地域へ」「医療中心から生活中心へ」という理念を、日本でも具現化するべきだという。 そのための財政的支援も不可欠だと強調する。日本の障害者福祉の対GDP比での予算水準は、経済協力開発機構(OECD)諸国の中でも低く0.198%(2007年データ)。平均並みの水準(0.392%)までは程遠い。OECDの中でも中間くらいには予算を分配してほしいと訴えた。