【ライブレポート】鈴木雅之、こっちのけんとが一発撮りに生配信で挑戦した『REAL TIME THE FIRST TAKE』
チャンネル登録者1,000万人を突破し、日本発の音楽ジャンルYouTubeチャンネルとして存在感を放つ『THE FIRST TAKE』。11月15日にチャンネル開設5周年を迎え、あらたな試みとして一発撮りのパフォーマンスを生配信する『REAL TIME THE FIRST TAKE』を行った。 動画:『THE FIRST TAKE』初回登場時の鈴木雅之、こっちのけんと ■“いつもどおり”の『THE FIRST TAKE』をリアルタイムで届ける意義 “一発撮りパフォーマンスを鮮明に切り取る”というコンセプトや、映像のクオリティの高さは何ら変わることのなく、アーティストの“熱”をリアルタイムで鮮明に届けた『REAL TIME THE FIRST TAKE』。 緊張がほぐれていくさま、感極まって涙を浮かべる瞬間、“あの頃”と変わらない和やかな瞬間、ふとした瞬間に見える素の表情、自身の音楽で一気に空間を掌握する瞬間…様々なかけがえのない瞬間をありのまま届ける。その“生々しさ=リアル”こそが『THE FIRST TAKE』が一発撮りにかけた想いなのだろう。 圧倒的な“リアル”を前にすれば、心が突き動かされるのは当然のこと。 あらたな試みとなった『REAL TIME THE FIRST TAKE』では、こっちのけんと、鈴木雅之の一発撮りを通じ、日本発の音楽ジャンルYouTubeチャンネルとして『THE FIRST TAKE』が歩んだ5年の“リアル”が刻まれていたように感じられた。 ----- ■チャンネル開設5周年を迎え開催した生配信 アーティストの一発撮りパフォーマンスを鮮明に切り取るYouTubeチャンネルとして、『THE FIRST TAKE』が始動したのが、ちょうど5年前の2019年11月15日。現在ではチャンネル登録数が1,000万人を超える人気コンテンツとなった『THE FIRST TAKE』だが、生配信での一発撮りは5年目にして初の試みである。 そんな、記念すべき『REAL TIME THE FIRST TAKE』に登場したのは、今年8月の初登場時に公開した「はいよろこんで」が、1,700万再生を突破(※2024年11月18日現在)。“はいよろこんで”が今年の流行語大賞候補にもノミネートし、『第75回NHK紅白歌合戦』への出場も決定している、こっちのけんと。 そして、“ラヴソングの王様”として名を馳せながら、“アニソン界の大型新人”としても大活躍。2020年、2022年に出演した際は、鈴木愛理、すぅ(SILENT SIREN)をゲストに迎え、TVアニメ『かぐや様は告らせたい』シリーズのオープニング主題歌を披露して視聴者の大きな話題を集めた鈴木雅之の2組だ。 ----- ■“今”を楽しむこっちのけんと トップバッターはこっちのけんと。開始前から「楽しみすぎる」「ワクワク」と生配信を心待ちにする視聴者からのコメントが溢れるなか、真っ白い空間に彼が大好きだと公言する“緑”を基調としたスーツ姿で登場したこっちのけんと。笑みを浮かべながらヘッドホンを装着すると、「ふふふ。あ~、緊張で笑っちゃうやつだ」と自身の緊張をほぐすようにつぶやく。 さらに、「皆さん、こんにちは…いや、違うや。『REAL TIME THE FIRST TAKE』だ。皆さん、こんばんは。こっちのけんとです」と挨拶すると、「緊張してるね!」とお茶目なポーズで気持ちを和らげ、「僕だけでは心もとないってことで…」とコーラスを担当する“仲の良い友達たち”を紹介。 少し落ち着いてきたところで「まずは1曲目を全力でやらせていただければと思います」と告げた、けんと。「一回深呼吸しようか?」と深呼吸して、両手でパチンと指を鳴らすと真剣な表情を浮かべ、1曲目「死ぬな!」のイントロが鳴る。 2022年12月にリリースされた楽曲で、SNSでのバズをきっかけに彼の名を世に広めるきっかけとなった「死ぬな!」。 キャッチーな曲調に乗せて“死ぬな!”と痛切なメッセージを届ける。表情やジェスチャーといった視覚的な部分も含め、楽曲に込めた想いがダイレクトに伝わってくるのは生配信ならではだが、それ以上に驚かされたのが歌唱力の高さである。正確なピッチ、幅広い声域を巧みに使い分けた豊かな表現力。一発撮りの生配信だからこそ伝わる、けんとの圧倒的歌唱力に「歌うますぎる!」「カッコ良い!」と絶賛コメントが踊った。 「死ぬな!」のラストフレーズ“願い事3つ考えろ”に左手の指を3本立てて、カッコ良く決めると、「…震えてるね、左手」と笑う、けんと。続いて、「いろんなことに関して、『もういいよ』と思うことがありまして。ネガティブなことじゃなくてポジティブなこととして、『もう自分を飾る必要はないんじゃないか?』と思って。『素の自分、こっちのけんとを出してもいいよ』ってことで、この曲を作りました」と楽曲制作の経緯を明かして始まった曲は、最新曲「もういいよ」。 自身のポジティブな気持ちを力強く歌う同曲。背中を押す心強いコーラスや、強さの裏にある弱い気持ちを表現するけんとのファルセットも効果的で、あまりにクオリティの高いパフォーマンスであったことから「本当に一発か!? ってくらい上手い!!」と視聴者も驚きを隠せない。 MCでは、「前回、『THE FIRST TAKE』に出させていただきまして。本当に自分の歌への価値観が変わった」と語り、「『THE FIRST TAKE』で歌わせていただいた時から、ライブ感のもう一個先、その一夜限りの感覚(が大事)な気がして。ちっちゃなミスもいいスパイスになって、むしろ美味しく感じるみたいな。そういった歌を努力して伸ばしていくきっかけになりました」と、『THE FIRST TAKE』に出演しての心持ちの変化を明かした。 さらに「だから本日、こうやっていっぱい歌えて光栄です」と告げ、「見てこれ、汗だく! もう極限!」と顔汗を指して笑う場面も。「僕の後にも、めちゃくちゃスゴイ『THE FIRST TAKE』が聴けると思うので。全力で盛り上げて終わろうと思います」と意気込みを語り、モールス信号の音で始まった「はいよろこんで」へ。当初のアナウンスでは2曲披露予定だったところ、まさかのサプライズに喜びのコメントが溢れた。 正確かつリズミカルな高速ボーカルにボイスパーカッションも挟みこみ、「すごすぎる!」「いつ息継ぎしてるの!?」と視聴者を驚かせた。生配信一発撮りならではの緊張感もありながら、“ちっちゃなミス”を恐れずに今を楽しむけんとの遊び心も見える歌唱は、まさにここでしか見れない一夜限りの貴重なパフォーマンスとなった。 ----- ■真剣に答えているうちに気づく「なに、この質問?」 3曲を歌い終えたこっちのけんとは、「ありがとうございました」とようやく安堵の表情を浮かべた。 視聴者からの質問では「パフォーマンス後の今の感想を!」と聞かれ、「この緊張はいつほぐれるんやろう? とずっと思ってた」と笑い、「『REAL TIME THE FIRST TAKE』だからこその絡み合った糸の状態で歌うみたいなものを見せられてて、これはこれで良かったんじゃないか?と思ってます」と回答。 続く、「帰ってからご褒美が何かあるとしたらどんなものがいいですか?」の質問には、「今、妻とかが見ているかも知れないので、手料理とか。あったかい味噌汁とかあったらいちばんうれしいですね」と回答。 視聴者質問最後の「これまで出会った緑色の中で『これ最高!』と思ったものは何ですか?」には、「今日かけてるメガネの緑のところ(フレーム)、この色がいちばん好きで。あと、工事現場の蛍光の緑! あの緑が最高ですね…なに、この質問?」と、先程までの緊張感から一気に開放された伸び伸びとしたひと時に思わず笑った。 「最後に生配信を今見ている視聴者の皆さんに一言メッセージをお願いします」という問いかけに対し、「本当に僕は皆様のおかげで…」と話し始めると、涙をこらえて声を詰まらせたけんと。「この場で自分の精神状態と戦えることができて。この場で『死ぬな!」とか、自分の過去にあったことを曲にした曲を歌うことができて、本当に良かったです」と心の内をさらけ出し、「悩んでる方は僕と一緒に一生懸命悩みましょう。悩んでない方はそのまま進んでください」と視聴者に優しいメッセージを贈った。 ----- ■驚きが溢れた“リアル”を魅せた鈴木雅之 続いての登場は、鈴木雅之。配信開始が待ちきれず、「マーチン!」「早く会いたい」と切望するファンが多く待機するなか、真っ白い空間によく映える水色のスーツ姿で颯爽と登場した鈴木雅之。 スタジオに立てられた3本のマイクのセンターに立つと、「さぁ、始まりました」と小声で告げてステージ袖に向かって手招きして。ステージに現れたのは、ラッツ&スターの佐藤善雄と桑野信義である。 「うわああああ」「最高かよ!」とコメント欄がざわつくなか、鈴木にハイタッチして、両脇にスタンバイしたふたり。「『THE FIRST TAKE』5周年おめでとうございます。お祝いの意味も込めまして、気心の知れたふたりを連れて来ました」と話す鈴木が佐藤と桑野を紹介すると、「皆さん、こんばんは。鈴木聖美です。雅之、ロンリー・チャップリン歌おう?」と姉に扮してボケる桑野に、「今日はそうじゃないから(笑)」と鈴木が渋い声でツッコむ。 さらに水色で揃えた衣装について、鈴木が「今日は私だけジャケットを着ておりますが」とオーダーメイドで作っているスーツが間に合わなかったことを明かすと、「そうなの!?」と驚き笑う佐藤と桑野。幼稚園、小学校時代からの付き合いである3人の仲の良さがよく見えるかけ合いから、「今日は十分に楽しんでいきたいと思います」と鈴木が意気込みを語ると、「我々の代表曲から皆さんに聴いてもらいたいと思います」と、1曲目「め組のひと」へ。 1983年にラッツ&スターの1stシングルとしてリリースされて以降、現在も多くの人々に愛され、歌い継がれてきた名曲のひとつ。近年では、TikTokの踊ってみた動画もきっかけとなり、Z世代へも浸透。ダンサブルなイントロに鈴木と佐藤がステップを合わせると桑野のトランペットが高らかに響き、力強く艶のある鈴木の歌声で視聴者を圧倒する。 3人で振りを合わせて「めッ!」のポーズをキメるダンスも楽しく、視聴者が画面に釘づけになっていると、間奏部分では画面の外でパーカッションやサックス、コーラス隊が生演奏しているシーンが映り、驚きと同時に“生配信一発撮りだから”という理由だけではない歌やサウンドの迫力や臨場感の秘密が理解できて納得。 「め組のひと」を歌い終えた鈴木が、リアルタイムならではのやりとりを見せようと「今、何時?」と桑野に聞く場面も。「あなたのターンがね? (ヘッドホンしながらやるって)なかなかないでしょ?」と佐藤に話し、「この感じが『THE FIRST TAKE』なわけですよ。レコーディング的なシステムだけど、我々は元々ダンスグループですから」と言ったり、和気あいあいとした雰囲気でMCを進めていく。 すると、「体がね、まだ温まってない気がするんですよ」「ちょっとアカペラかなんかで、心をひとつにする。これが大事なんじゃないか? と思うんです」と呼びかけ、3人で右手を胸に置いて歌い始めた曲は、3人の母校である大田区立大森第八中学校の校歌。説明もなく歌い始めた同曲に「校歌!?」と気づく感の良い視聴者もいるなか、美しいハーモニーと心を重ねて気持ち良さそうに歌いきると、「なんかひとつになった気がすごくするね。オールディーズな感じで」と語る鈴木。楽しそうに笑い合う3人に「校歌もオシャレ!」とコメントがつき、視聴者も彼らのお茶目な一面を楽しんでいた。 続いて、「我々グループとして、ルーツミュージックみたいな形で歌い始めて。結成30年、35年、40年とこうしてメンバーが集まって歌い続けています」と、来年デビュー45周年を迎えることを語った鈴木。「来年はドゥーワップ、ルーツミュージック、ロックンロールをみんなに楽しんでもらいたい。そんな想いでいます」と来年に控えた45周年アニヴァーサリーツアーへの意気込みを語ると、「我々のルーツミュージックであり、グループ時代のデビュー曲を聴いてください!」とシャネルズ(後のラッツ&スター)時代のデビュー曲「ランナウェイ」のパフォーマンスが始まった。 1980年リリース、デビュー曲にしてミリオンセラーを記録し、当時はあまり知られていなかったドゥーワップで日本の音楽シーンを震撼した名曲「ランナウェイ」。意外な選曲に「やったぁ!」「キターーー!」と歓喜する視聴者を、鈴木の圧巻の歌唱力と魅惑のバリトンボイス、息の合ったコーラスワークでたっぷり魅了。歌唱中に起きた、高評価のハートマークの嵐からも、視聴者の満足度の高さがよくうかがえる。 ----- ■「夢は見るものじゃなくて、叶えるものだから」 パフォーマンス後の視聴者からの質問では、「『THE FIRST TAKE』はテレビでの歌唱より緊張しますか?」と聞かれ、「それはみんな緊張するんじゃないですか? しかも今回は『REAL TIME THE FIRST TAKE』ということで生ですから、何があるかわからない」と話しながら、「俺はヘッドホンをして歌うことで、いちばん良いコンディションの部分をひとつの歌に閉じ込めたいと思うんだけど。その雰囲気をこの空間でそのまま味わえているという意味では、緊張より興奮が勝って、とてもクセになる。そんな感じですかね」と回答。 「夢を叶えるまで夢を諦めない方法は?」という質問には、「夢は見るものじゃなくて、叶えるものだから」と答え、「音楽に携わる人だとするならば、“音楽が大好き”という思いを持っていれば、必ずいろんなタイミングで音楽の神様がパワーを振りかける瞬間があるから。そのキャッチの瞬間をどう自分が出来るか? 夢を見て前に突き進んでいるやつほど、音楽の神様は手を差し伸べてくれるから。それを見逃さないでほしい」とアドバイス。 さらに「歌手を目指した理由は?」という質問には、元々やっていたドラムやギターを怪我で断念した経験を語り、「『お前にとっての音楽は歌うことなんだ』という思いにさせられた瞬間があって。そこからはずっと歌でみんなに何かを届けていければと思って、今もこうして歌っています」と真摯に語った。 そして、「最後に生配信を今見ている視聴者の皆さんに一言メッセージをお願いします」の問いかけには、「『THE FIRST TAKE』をご覧の皆さんもいろんな人生の浮き沈みがあると思いますけど。必ず、自分の思った道を突き進むことによって『間違いないんだ』と自分の背中を押してやれるような、そんな人生を歩んでいってほしい。そのために我々が音楽で応援できるのであるならば、そんな音楽をずっと続けてみんなに届けていきますから。楽しみにしてほしいです」と熱いメッセージを届けた。 最後は、「すみません、もう一回頭からやりませんか? 『THE SECOND TAKE』ってことで」とボケる桑野に、「これ、『THE FIRST TAKE』だから!」とツッコむ鈴木。「たっぷり楽しませてもらいました、ありがとうございました」と鈴木が締めの挨拶をしても、配信が終わるその瞬間まで楽しそうに笑い合っている旧知の3人の姿が実に微笑ましかった。 TEXT BY フジジュン PHOTO BY Kazuki Nagayama
THE FIRST TIMES編集部
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