ブラムハウス大解剖!観逃したらもったいない、粒ぞろいの劇場未公開作
2000年に設立され、2006年ごろから本格的に自社での映画製作をスタートさせた「ブラムハウス・プロダクションズ」。それから20年と経たないあいだに手掛けた作品は、映画とドラマシリーズをあわて150本以上。そのなかでも、創設者であるプロデューサーのジェイソン・ブラムが“恐怖の工場長”とも称されるように、ブラムハウスの看板はやはりホラー/スリラー映画だ。 【写真を見る】「BTTF」と「ハロウィン」が融合してエンタメホラーに!ブラムハウスだからできた挑戦的な青春ホラー スタジオの名を世に知らしめた『パラノーマル・アクティビティ』(07)から最新作『ナイトスイム』(6月7日公開)に至るまで、ブラムハウスの手掛けた“怖い映画”は日本に紹介されているだけで100本以上にのぼる。本コラムでは、全3回にわたってブラムハウスの“怖い映画”を可能な限りピックアップし、映画ファンを魅了するブラムハウスのクリエイティブの秘密に迫っていく。最終回となる第3回は、隠れた秀作が揃った日本劇場未公開作品をご紹介していこう。 ■昨年話題を集めた青春ホラーなど、配信公開作も見落とし禁物! 自分から積極的に探そうとしなければ、なかなか出会う機会が少ないのが“劇場未公開作品”。海外の情報を頻繁にチェックしていたとしても、いつの間にか日本でひっそりと観られるようになっていて見落としている…なんてことも少なくないだろう。 劇場未公開と聞くと、「クオリティが高くない作品かも?」と先入観を持ってしまう人も少なくないだろう。だが近年では動画配信サービス向けに製作したオリジナル映画も増加しており、クオリティが劣るとは一概に言えない状況となっている。 昨年の10月にプライム・ビデオで配信された『ハロウィン・キラー!』(23)は、そのなかでも特に大きな話題を集めた一本。1987年のハロウィンに小さな町で少女3人が殺人鬼“スイート16キラー”に殺害される事件が起き、未解決のまま35年の歳月が流れる。再び現れた殺人鬼に母親を殺された16歳の女子高生は、殺人鬼を捕らえようとするも逆に命を狙われ、ひょんなことからタイムマシンで1987年へとタイムスリップしてしまうのだ。 ちょうどブラムハウス製作のもとでリブート3部作を完結させたばかりの名作ホラー「ハロウィン」シリーズと、SF映画の金字塔「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ。さらに1980年代の青春映画の要素や1990年代にブームとなったティーンスラッシャー映画の要素を小ネタのように散りばめ、純然たる殺人鬼ホラーでありながら娯楽性が非常に高い。 批評集積サイト「ロッテン・トマト」では、批評家からの好意的評価の割合が87%とブラムハウスの看板作品に匹敵する高評価を獲得した『ハロウィン・キラー!』。ほかにも同サイトによれば、カントリーミュージック界の気鋭デュオが伝説の歌手の屋敷で体験する恐怖を描く『引き裂かれた心』(22)も批評家からの好意的評価89%とかなりの高評価を集めているようだ。 ■ブラムハウスの多様な“恐怖”を味わえる、プライム・ビデオのプログラムは注目 コロナ禍の2020年と2021年には、ホラー映画がもっとも盛り上がるハロウィンの時期にあわせて「Welcome to the Blumhouse」と題してプライム・ビデオで新作映画が各4本ずつ、計8本配信される試みが行われた。 2020年のラインナップは記憶を失くした男に降りかかる不気味な恐怖を描いたママドゥ・アティエ主演の『ブラック・ボックス』(20)、シドニー・スウィーニーとマディソン・アイズマンが共演した『ノクターン』(20)、かつて自分を殺そうとした男の生まれ変わりが娘の恋人として現れる『イーブルアイ』(20)、そして友人を殺したという娘の罪を隠蔽しようとする両親を描くスリラー『冷たい嘘』(18)。 また2021年は、邪悪な者たちに立ち向かう老女を主人公にしたホラーコメディ『悪魔のビンゴカード』(21)や、少女とヴァンパイアの戦いを描く『ブラック・アズ・ナイト』(21)、奇妙な現象に見舞われる夫婦を描く『マードレス 闇に潜む声』(21)、そして老人養護施設を舞台にしたスーパーナチュラルホラー『呪われた老人の館』(21)の4本が配信。どれも粒ぞろいの佳作ホラーばかり。 ■あのオスカー女優がサイコパスに!?人気スターの出演作も多数 『呪われた老人の館』で主演を務めているのは、「インシディアス」シリーズなどにも出演している名女優バーバラ・ハーシー。このように、劇場未公開作品のなかにも、著名なスター俳優やオスカー俳優の出演作、また人気監督の作品があったりするので油断できない。 例えば、歌手としても有名なジェニファー・ロペスが主演を務め、年下の青年から執拗に付きまとわれる高校教師を演じた『ジェニファー・ロペス 戦慄の誘惑』(15)、ジェシカ・アルバがとあるカルト宗教団体の闇を追うドキュメンタリー作家を演じた『ジェシカ・アルバ ヘブンズ・ベール~死のバイブル~』(16)がそうだ。 ほかにもデヴィッド・オイェロウォが過去の世界と繋がり殺人事件を阻止しようとする『ドント・レット・ゴー -過去からの叫び-』(19)や、オスカー女優オクタヴィア・スペンサーが狂気に満ちた隣人を演じた『マー -サイコパスの狂気の地下室-』(19)。さらにケヴィン・ベーコンとアマンダ・セイフライドが共演し、デヴィッド・コープが監督と脚本を務めるという豪華な座組の『レフト -恐怖物件-』(20)なども。 またスタッフにもフォーカスを当ててみれば、ブラムハウスを代表する人気シリーズ「パラノーマル・アクティビティ」の生みの親であるオーレン・ペリの『エリア51』(15)であったり、『ダ・ヴィンチ・コード』(06)など数々のヒット作で脚本を手掛けたアキヴァ・ゴールズマンがメガホンをとった『ステファニー 死体と暮らす少女』(17)も劇場未公開となっている。 そして“ホラーの帝王”スティーヴン・キング原作では『ハリガン氏の電話』(22)や『スティーヴン・キング 血の儀式』(14)があるので、ファンならば絶対に押さえておきたいところだろう。 ここまで全3回に分けて紹介してきたブラムハウス・プロダクションズのホラー/スリラー映画。今後も低予算ながらハイクオリティかつ画期的な作品を世に送りだしていくであろうブラムハウスは、もはやスタジオというより一つのジャンルとして定着したといっても過言ではない。 “恐怖の工場長”ジェイソン・ブラムが仕掛ける次なる恐怖に期待しながら、すでに日本国内で観ることのできる100作品以上の“恐怖”を思いっきり楽しんでみてはいかがだろうか。 文/久保田 和馬