「漫画がおもしろければ、誰かが必ず見つけてくれる」“ジャンプルーキー!”からアニメ化まで上りつめた『ラーメン赤猫』。漫画家・アンギャマンがこだわる「気持ちのいい読後感」
『ラーメン赤猫』アニメ化インタビュー(後編)
そのユーモラスかつ優しい世界観に、ハマる人が続出している人気漫画『ラーメン赤猫』。2024年7月からはTBS系28局でテレビアニメの放映が決定している。作品を手がけた漫画家・アンギャマン氏に、同作に込めた想いと制作の舞台裏について話を聞いた。 【漫画を読む】『ラーメン赤猫』第2話
「そこにいる人たちが納得していればいい」
–––先ほど「よい読後感のために、一度ストレスを作らないといけない」とおっしゃっていました。ということは、まずストレスのある状況やキャラクターを考えて、それをどう解決するかというアプローチで作品を描いているのでしょうか。 アンギャマン(以下同) そういうことが多いですね。読後感をよくするのって、問題を完全に解決させなくてもいいんですよ。その場とか、そこにいる人たちが「よかった」と納得していればいいというか。 たとえば『ラーメン赤猫』でいうと、佐々木が炎天下の中を歩く赤ちゃん連れのお母さんを見つけて、店に招き入れてラーメンを提供する話があるんですが、あれも今後のことを考えると課題がたくさんありますよね。「いつでもできることじゃない」とか、「今後もそれを期待されたら困る」とか。 でも、佐々木の明るい反応と、文蔵が「無理のない範囲でな」と言ったことで、その場は丸く収まっている。それでいいんだと。 –––じんわり「よかった…」と思わせるリアルさがありますよね。 そう思っていただけるとうれしいです。「ジャンプルーキー!」に投稿している作品もそうですが、ほかの読み切りとか、前連載作の『夜ヲ東ニ』も同じことを意識して描いていたんですが……当時は世界観が重厚すぎて、僕の想いを読者に伝えきれませんでした。 その点『ラーメン赤猫』は、基本的には店内での話。舞台が限定されているぶん工夫が要求されるので、それが僕には合っていたんじゃないかなと思います。
個性豊かなキャラクターたちの誕生秘話
–––そもそも、『ラーメン赤猫』の物語はどんな着想から作られたのでしょうか。 最初は、SNS用のちょっとした漫画くらいの気持ちでネームを作りました。『夜ヲ東二』を連載するより前のことです。その連載が終了していろいろ模索するなかで、また描いてみたという感じですね。 –––個性的な働く猫たちは、どのように誕生したのでしょうか。 文蔵、佐々木、サブ、ハナの4匹は、初期の構想段階ですぐに固まりました。最初に猫が経営しているラーメン屋の話を作ろうと決めて、まずはラーメンを作る猫として文蔵が、でも1匹じゃ大変だろうということでサブが、そして世界観的に猫としての強みを自分で理解している存在がいたほうがいいなということで接客担当のハナが、あとは経営者ということで佐々木です。 –––製麺担当のクリシュナはどのように? 物語を考えていくなかで、お店で何かトラブルが発生したとき、猫4匹だけだと「対処できないのでは?」と思ったんです。そこで、その解決役として虎のクリシュナが生まれました。 –––お店で唯一の人間・珠子(たまこ)が生まれた経緯も教えてください。 クリシュナを加えたとしても、やっぱり猫だけだとお店が回らないなと。そこで、アルバイトとして人間を迎えることにしたんです。 珠子は最初、髪の長い引きこもりキャラでした。その子が社会的に成長していく姿を描くことで、ジャンプっぽい成長物語を描けないかな、なんて思ったりも(笑)。でも、『ラーメン赤猫』はあくまで猫のお話だと思い直し、元OLという設定に変更しました。珠子がいることで、「人間から見た、猫が経営するラーメン店の魅力」を伝えやすくなったとも思います。 –––そうして作った作品が、投稿作から最終的に「ジャンプ+」の本連載になるわけですが、それが決まったときの気持ちを教えてください。 単純にうれしかったです。特に、インディーズ連載時代からコメントで「単行本を…」といってくださる方が多かったので、それに応えられるのがうれしくて。ずっとインターネット上で活動してきた人間なので、本になること自体が感激なんですよね。 インターネットって時間の取り合いじゃないですか。でも、単一メディアである紙なら、漫画だけの時間に没入して楽しんでもらえるので。
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