《追跡取材》小林製薬「紅麹サプリ」のプベルル酸は青カビなのか?5つの疑問
【Q2】サプリの服用はやめるべき?
とはいえ、消費者の心配は尽きない。健康食品を製造販売する企業などを取材する業界紙の記者は、現状をこう明かす。 「紅麹を使用していないサプリメントでも、定期購入のキャンセルが相次いでいます。企業には“大丈夫なのか”との問い合わせが殺到し、混乱に陥っている。店頭での販売も落ち込むでしょうし、業界としては大打撃です」 このように、サプリメントの服用を中止した人も多いはず。しかし、前出の柴田医師は、こう話す。 「本来含まれる予定でなかった成分の混入が問題ならば、サプリメント全体に今回のようなことが起こりえる可能性は確かにある。そのための安全性を担保する制度設計は必要だと思います。 だからといってサプリメントの服用を多くの人がやめてしまうことに、医師として危機感を覚えています」(柴田医師、以下同) それはなぜか。 「多くの人がサプリメントによる自己管理をしなくなることで、毎年増え続けている医療費が追いつかなくなり、私たちが支払う社会保険料もさらに高くなっていく。だからこそ、日々の健康管理はご自身で気をつけていただく必要があると思っています。サプリメントは、その健康管理を助けるひとつの手段となるものです」 ただ、サプリメントの服用には、注意点もあるという。 「先にも話しましたが、例えばコレステロールを下げる薬に使われている成分は、紅麹にも含まれています。つまり、飲んでいる薬とサプリメントで、重複する成分を摂取すると内臓に悪影響が出る場合があるんです。これ以外にも、薬に入っている成分とサプリメントの成分の飲み合わせが悪い場合もあるんです。 そのため、かかりつけのお医者さんがいる場合には、どんなサプリメントを飲んでいるのか伝えて相談してください。今回の問題が起きたことで、患者さんがどのようなサプリメントを飲んでいるか聞くべきだと思った医師も多いはずです」
【Q3】サプリを服用して体調を崩したら?
多くの人が安心だと思ってサプリメントを服用し、健康被害に遭った。身体に悪影響のある成分が入っていても、気がつかない場合もある。 「問題が大きくなった背景には、腎疾患が起きたという点が大きい。腎臓は沈黙の臓器と呼ばれており、何らかの症状が出た場合には、かなり悪化している状態の可能性が高い。 しかし、日本腎臓学会が行った調査では、小林製薬が販売していた該当サプリメントで腎疾患を発症したケースの4分の3は、服用を中止すれば、治療をせずとも腎機能がほぼ回復しているとの結果が出ているんです。 今回のようなことが起こりえるのだと意識しつつ、飲み始めて体調を崩したり、何かしらの異常が出た場合には、すぐに服用を中止してください」 ただ、こんなケースもあると警鐘を鳴らす。 「みなさんが薬局で買える市販薬や漢方、サプリなどは安全だと思っている方が多いような印象を受けるんです。というのも、私の外来に漢方薬のかなりひどい副作用で来られた患者さんがいたんです。しかし“漢方は安全だから、そんな副作用が起きるワケないでしょう”と言う。漢方もサプリメントも、副作用やアレルギー反応が起きることがある。自分の身体に合わない可能性があることも、考えて使用してほしい」 そして医療機関との連携が大切なのだと訴える。 「手足のむくみやおしっこの回数が増えたなどの異常を感じ血液検査を受けたことでわかったケースや、健康診断を受けて問題が判明した人もいたようです。ですから、最低でも年1回は健康診断を受けて異常がないか確認することが大切です」 問題となっているサプリメントの紅麹原料を製造していた小林製薬の工場は、品質・衛生管理に関する指針『適正製造規範(GMP)』の認証を取得していなかった。この点も、消費者にとって選択のポイントになると、前出の業界紙記者が話す。 「GMP認証を受けた製造工場で作った商品には、GMP製品マークを記載することができます。店頭で手に取った際やWEBで見たときに、認証マークがあるかどうかは、サプリメントを選ぶ一つの基準となるでしょう。誰もが知る大手企業だから安心という考えは、捨てるべきです。小さい会社でも、しっかりやっているところはたくさんあります」 消費者が心から安心するためには、企業の努力も必要不可欠だ。